暴走する中国ゲノム研究
China’s Bioethics Struggles Enter the Spotlight
功名心にはやり、欲に目がくらむ研究者は中国人だけではない。データ偽造や倫理面での問題で批判を浴びた研究の中には、欧米の研究者が関わったものも多々ある。賀の実験にも米ライス大学のマイケル・ディーム教授(生物工学)が協力したと報道された(ライス大学はこの件について調査中とコメント)。
倫理基準に忠実な多くの中国人研究者にすれば、賀の実験は自分たちの名誉をおとしめるものだ。中国科学技術省は実験関与者の研究活動中止を命じ、南方科技大学は「賀は無給の休暇中」で、大学は研究内容を把握していないとの声明を出した。
賀が投稿した動画には抗議のコメントが殺到した。ある若者は「中国人学生として、こういう研究者がいることが恥ずかしい」と嘆いている。
中国のニュースサイトには、賀の実験は危険かつ不当であり、中国の生物医学界の名誉を傷つけるものだとして強く非難する公開書簡が掲載され、これまでに120人以上の中国人科学者が署名している。
当の賀は28日に香港で行われた国際会議で研究の正当性を主張。突然脚光を浴びた野心家は、引きずり降ろされるまで主役の座にしがみつく気らしい。
<本誌2018年12月11日号掲載>
※12月11日号(12月4日発売)は「移民の歌」特集。日本はさらなる外国人労働者を受け入れるべきか? 受け入れ拡大をめぐって国会が紛糾するなか、日本の移民事情について取材を続け発信してきた望月優大氏がルポを寄稿。永住者、失踪者、労働者――今ここに確かに存在する「移民」たちのリアルを追った。
© 2018, Slate
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