GAFAのうち2社は習近平のお膝元
12月24日のコラム「日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?」にも書いたように、1980年代、日本の半導体がアメリカ製を凌駕したために、アメリカ政府は日本の半導体を「アメリカのハイテク産業あるいは防衛産業の基礎を脅かすという安全保障上の問題がある」として攻撃し、高関税をかけ様々な制裁を設けて、立ち直れないまでに叩きつぶしてしまった。
今はHuaweiを同様の理由で攻撃しているが、それはHuaweiの売り上げがAppleを超えただけでなく、ハイシリコンの半導体技術がクァルコムと同様に高いからである。
次に叩くのは、おそらく韓国のサムスン電子だろう。だから「米韓同盟が長く続くとは思うなよ」という趣旨のことをアメリカは言い始めている。
アメリカが世界一を保つための、この常套手段は変わらないだろうが、問題なのは、このような民間企業であるHuaweiを攻撃のターゲットにしている間に、中国がもっと上のレベルの、そしてスケールの大きな情報の抜き取りを「しめしめ」とばかりにやれる環境を、日米が力を合わせて作ってあげていることだ。日本の「日の丸半導体」を沈没させた背景に対する反省もなく、「そうだ、そうだ」と、レベルの低いところで叫んで、実は中国を喜ばせていることに、日本はやはり気が付かない。
習近平は、民間企業Huaweiが国有企業ZTEと怨念の30年戦争を続けていることによって、実は窮地に追い込まれていた。しかし日米による「噂」に基づくHuawei攻撃は、ある意味、習近平に救いの手を差し伸べているのである。そんなところに世間の目が集中していれば、本当のサイバー攻撃をしている部署や巨大な情報抜き取りに特化している部署は、国際社会の目から覆われて見えなくて済む。日米は習近平に、ありがたい「煙幕」を提供しているのである。
GAFAの内の2社が、習近平に抱え込まれている事実に、日本人は気づくべきだろう。
いかなる恐るべき事態が動いているかに関しては『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』に詳述した。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』(2018年12月22日出版)、『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』(中英文版も)、『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』、『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。