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食「魚の脂に含まれる成分が心臓発作や脳卒中の予防に役立つ」との研究結果が相次ぐ
kohei_hara-iStock
<魚油由来の薬剤が心臓発作や脳卒中、その他の心血管疾患の予防に効果的であることを示す研究結果が、最近、相次いで発表された>
長年にわたって米・魚を中心とした食生活を営んできた日本は、世界有数の"魚食大国"だ。2007年3月には、神戸大学の横山光宏教授らの研究チームが日本人の高コレステロール血症患者を対象とする研究結果を発表し、「青魚の脂に多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)は、高コレステロール血症患者にとって、突然心臓死や心筋梗塞などの冠動脈イベントの予防に役立つ」ことを明らかにした。
米国では、成人の55%にあたる4300万人に、悪玉コレステロール(LDL)を低下させる「スタイン」などの高コレステロール血症治療薬が投与されており、食を中心とする生活習慣の改善も課題となっている。このようななか、魚油由来の薬剤が心臓発作や脳卒中、その他の心血管疾患の予防に効果的であることを示す研究結果が、最近、相次いで発表された。
「週に2回以上、食事に魚を取り入れることを推奨する」
米ハーバード大学医学大学院のディーパック・バット教授を中心とする研究プロジェクト「REDUCE-IT」は、「スタイン」を服用している患者8179名を対象に、米医薬品メーカーのアマリンが開発した高純度EPA製剤「バシーバ」が心血管疾患リスクの軽減に効果があるかどうか検証した。その結果、1日2回、2グラムの「バシーバ」を服用した患者は、そっくりの偽薬を服用した患者よりも、中性脂肪(トリグリセリド)の値が減少し、心血管疾患リスクが低下し、心血管疾患による死亡も少なかった。
米ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のジョアン・マンソン博士を中心とする研究プロジェクト「VITAL3」では、50歳以上の男女2万5871名を平均5.3年にわたって追跡調査し、英医薬品メーカーのグラクソ・スミスクライン(GSK)が開発したオメガ-3脂肪酸製剤「ロバザ」の効果を検証した。その結果、「ロバザ」を服用した人は、そっくりの偽薬を服用した人に比べて、心臓発作のリスクが28%軽減された。この効果は、とりわけ、週に摂取する魚が1.5人分未満の人により顕著に現れ、心臓発作のリスクが4割も軽減した。
マンソン博士は、この結果について「オメガ-3脂肪酸に心臓によい効果があることを示すものだ」とし、「週に2回以上、食事に魚を取り入れることを推奨する」と説いている。
日本では、国民1人あたりの魚介類の摂取量が2001年をピークに減少傾向にあるという。米国でのこれらの研究結果をふまえ、古来からの魚食を改めて見直すべきなのかもしれない。