最新記事

「儲かるエコ」の新潮流 サーキュラー・エコノミー

サーキュラー・エコノミー 世界に広がる「儲かるエコ」とは何か

THE CIRCULAR ECONOMY GOES MAINSTREAM

2018年10月10日(水)18時50分
ウィリアム・アンダーヒル(ジャーナリスト)

©2018 Accenture GORODENKOFF/ISTOCKPHOTO (LABORATORY), DENIS BALIBOUSE-REUTERS (ALUMINUM), SEAN PAVONE/ISTOCKPHOTO (FACTORY), RUPAK DE CHOWDHURI-REUTERS (STORE), TATSIANAMA/ISTOCKPHOTO (SMART PHONE), NGUYEN HUY KHAM-REUTERS (PLASTIC BOTTLES);

<単なるリサイクルやリユースにとどまらず、あくまで儲かるビジネスを目指す革新的概念「サーキュラー・エコノミー」とは? 本誌10/10発売号「『儲かるエコ』の新潮流 サーキュラー・エコノミー」特集より>

※本誌10/16号(10/10発売)は「『儲かるエコ』の新潮流 サーキュラー・エコノミー」特集。企業は儲かり、国家財政は潤い、地球は救われる――。「サーキュラー・エコノミー」とは何か、どの程度の具体性と実力があるのか、そして既に取り組まれている20のビジネス・アイデアとは?

エレン・マッカーサーはチャレンジの何たるかを知っている。果てしない大海原をたった独りで航海し、数多くの賞に輝いてきたからだ。

幼いうちから自分の目標を定め、お小遣いをためて最初の小さなボートを買った。その強い思いが報われたのは2005年。マッカーサーは28歳の若さでヨットによる世界単独一周の最短記録を打ち立てた。孤独と疲労、荒れ狂う海に挑んだ71日間の旅だった。

しかし海の勝利の遺産は、手にしたトロフィーの数よりはるかに価値がある。マッカーサーは現在、「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」の推進に精力を注いでいる。この経済の最新の概念は、人間の使い捨て習慣を正し、環境破壊を防ぐもの。おそらく最も実行可能なアイデアだ。

マッカーサーは単独航海中に、わずかな備蓄品で命をつないでいる自分の状況が、地球環境の現状と似ていることに気付いた。海上ではヨットの貯蔵庫の中身を補充できない。地球の資源も同じだ。「私たち人類は、地球の限りある資源を使い切ってしまおうとしている」と彼女は思う。

母国イギリスで、マッカーサーは海から陸に上がって活動家に転身。現在は2010年に設立したエレン・マッカーサー財団を率いて、ホーン岬を吹き荒れる大風に立ち向かった頃の勢いでサーキュラー・エコノミーの大義を説いている。「これは私が体験したことのない最大のチャレンジ。グローバル経済の未来を守るチャレンジ」だと信じるからだ。

彼女の分析は明快だ。今の経済システムには欠陥があり、地球の資源は地球と人類の生存を脅かす速度で消費されている。19世紀に産業革命が進んで以来、人間は使い捨ての「直線型経済」に慣れてきた。「作って、売って、使って、廃棄する」経済だ。

こんなことを続けるのは愚の骨頂だ、とマッカーサーは言う。私たちは今後50年で銅や銀、スズ、亜鉛といった資源を枯渇させ、気候変動を加速させ、ごみ処理場を満杯にし、プラスチックで海を汚染し尽くす可能性がある。いま求められるのは、全く新しい視点からのアプローチだ。

部品の85%を新製品に再利用

マッカーサーとサーキュラー・エコノミーの支持者たちは、この難題に対処できると考える。10月22〜23日、日本の環境省とフィンランドの基金が共催する「第2回世界循環経済フォーラム」が横浜で各国政府や自治体、NGOなどの関係者を集めて開かれる。メッセージは「直線型モデルはもう古い、これからは循環型だ」。

では新モデルの中身とは? まずは、製品を繰り返し利用できるものにすることが挙げられる。原材料が天然素材または「生分解性」の物質なら廃棄しても構わない。しかし「産業技術系の」物質は転用し、再使用しなければならない(生産したメーカーが再使用にも責任を持つのが理想的だ)。今では「閉鎖ループ」という言葉を目にする機会も増えてきた。

【参考記事】日本の消費者は欧州と違う、循環型経済に日本企業はどうすべきか

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスが人質リスト公開するまで停戦開始

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中