確かにデンマークから先進的に始まっている──これからの食と農のスタイル
デンマーク政府もこの流れを推進
デンマーク政府は、このような「ニューノルディック・キュイジーヌ」を中心とする草の根のムーブメントと積極的に連携しようしている。デンマーク環境食糧庁では、2016年から、よりよい食システムの実現をテーマとして、世界各国の政府や地方自治体、民間企業、研究機関、学者らが一同に会する年次国際会議「ワールドフードサミット」を開催し、デンマーク内外のシェフもここに招聘している。
2018年8月に実施された第三回会議では、プリージ氏、ガスティ氏も登壇し、それぞれの取り組みについて披露した。プリージ氏は、ガストロノミーが食の分野で果たすべき役割として、「ガストロノミーは、食の本質的な価値をより深く伝えることができる」と説く。
また、ガスティ氏は、限られたコストで旬の地元食材を使った美味しい学校給食を提供する自らの取り組みを紹介し、「育ち盛りの子どもたちには、栄養価の高い食事が不可欠だが、食わず嫌いも起こりやすい。食本来の美味しさを体験させ、『栄養のある食事は美味しい』という感覚を身につけさせることが重要。シェフの知識やスキルは、食の美味しさを子どもたちに伝えるうえで有効だ」と述べている。
世界を代表するオーガニック先進国となったデンマーク
「ニューノルディック・キュイジーヌ」の社会的な広がりは、デンマークの消費者ニーズに変化をもたらし、農業やビジネスにもポジティブな影響を与えている。
デンマークはいまや世界を代表するオーガニック先進国だ。デンマークにおける有機食品の市場規模は2017年時点で144億クローネ(約2504億円)に達し、食品全体の13.3%を占めている。デンマークの消費者の51.4%が、毎週、何らかの有機食品を購入しているそうだ。
デンマーク環境食糧庁では、国内外での有機食品に対する需要増に応えるべく、有機農業への転換を推進しており、助成金として、2015年から2017年までに3億7300万クローネ(約65億円)を投じ、さらに2018年から2019年にかけて10億クローネ(約174億円)を充てる計画を明らかにしている。