大規模地震に襲われたロンボク島に新たな危機 復旧進まぬまま雨期到来でマラリア流行の兆し
雨期で感染症が拡大の懸念
7月29日の地震発生直後に最も被害の大きかったロンボク島北部に自力で入った日本人によると、余震が激しく道路両側には倒壊した民家や商店から上がる粉塵で視界がほとんどない状態だったという。そして急ごしらえの避難所で偶然会った現地在住の日本人女性はティッシュ、飲み水などの生活品、飲料が不足して困っていると訴えたという。
ロンボク島での相次ぐ地震は西隣のバリ島にも被害をもたらし、人的被害はほとんどなかったものの建物にひびが入ったり、天井が落ちたり外壁が崩れたりした。
バリ島は2017年11月以来、東部にあるアグン山(3014メートル)が噴火、一時ングラライ国際空港が閉鎖されるなど、観光業が大きな影響を受けた。
2018年の7月2日にもアグン山は再び噴火して溶岩が流出し、火口の半径4キロ以内が避難区域に指定された。ただ、空港がある地区までは直線距離で約60キロ離れており、現在では観光にほとんど影響がでていないという。
10月からの雨期で感染拡大の懸念
インドネシアを代表する観光地であるバリ島が火山噴火、ロンボク島が地震と相次いで自然災害に見舞われた。そこへ今回のマラリア感染の拡大という新たな事態が発生したことで特にロンボク島の観光産業は大きな打撃を受けており、アリフ・ヤフヤ観光相はロンボク島の観光客は少なくとも10万人減少するとの見通しを示し、観光客が以前のように回復するまでに半年かかるとの予測を明らかにしている。
ロンボク島のあるインドネシアは例年10月から約半年間の雨期を迎える。雨期には雨水などによる水溜りで蚊が大量に発生、繁殖することが多く、ハマダラ蚊によるマラリア感染の可能性も高くなる。
また雨期にはいろいろな種類の蚊が増えるため、同じく蚊を媒介とするデング熱も流行する傾向があることから、今後さらに警戒が必要となる。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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