それでも私は辞めません......安倍首相の異例の長期政権が意味するもの
ABE JUST WON'T QUIT
もう1つのスキャンダルは、学校法人森友学園をめぐるものだ。同学園が運営する幼稚園は教育勅語の導入など非常に昔ながらのカリキュラムを採用し、保守派政治家の一部に受けがいい。
16年、森友学園は開校予定だった小学校の建設用地として、大阪府にある国有地を評価額のわずか14%ほどで取得する契約を結んだ。格安での国有地払い下げが問題視されると、財務省は当初、地下の産業廃棄物などの撤去費用を考慮した正当な値引きだと説明。森友側との交渉記録は破棄したと主張したが、その後に文書が発見された。
これらの記録は国会に提出されたが、一連の流れの中で財務省側が公文書を改ざんする事件も起きた。文書から削除されたものの1つが、森友が開校予定だった小学校の名誉校長に就任していた安倍の妻、昭恵に関する記述だ(昭恵はその後、名誉校長を辞任)。
そんななかで、安倍の支持率は低下を続けた。世論調査によってばらつきがあるものの、内閣支持率は昨年初めの時点で55%前後に達していたが、今年4月には30%前後にまで落ち込んだ。政権関係者の間でほかにもスキャンダルが相次いだことを考えれば、通常なら自民党内で「首相降ろし」の動きが起きたとしてもおかしくない。
戦後の大半を通じて、日本の首相は規則正しいと言いたいほどの頻度で交代を繰り返してきた。現行憲法下の1947年以降、第2次安倍政権が発足するまでの65年間の歴代首相の平均在職期間はわずか約2年。01年に首相に就任した小泉純一郎は06年まで例外的な長期政権を率いたが、その後の6年間には6人の首相が誕生した。
そのせいで、日本は国際社会で明確な「顔」を示せないままだった。G7などの首脳会合に出席するのが毎回のように違う人物ならば、それも当然だ。
この点は首相官邸側も十分に意識している。内閣官房参与の谷口智彦は今年1月号の雑誌「月刊Hanada」への寄稿で日本は「長い闘い(ロング・ゲーム)」に臨んでいると述べた。
バブル経済が崩壊した90年頃から「私たちは総理大臣を、あたかも弊履(へいり)のごとく捨て続け」たと、谷口は記す。だが今や、「『モリ・カケ』ごときで」首相を取り換えるべきではないと、有権者は皆、考えているのだという。