最新記事

北朝鮮情勢

北朝鮮の建国節、習近平欠席!

2018年9月4日(火)23時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

習近平、動かず Nicolas Asfouri/REUTERS

9月9日の北朝鮮建国記念日の式典に習近平国家主席が欠席することが分かった。代わりにチャイナ・セブンの一人で党内序列ナンバー3の栗戦書氏が行く。習近平が欠席する理由の一つは北朝鮮がアメリカに提出している核申告リストを中国が不十分だとみなしているからで、二つ目はわざわざトランプに中国が非核化を邪魔していると批判する口実を与えたくないからだ。

習近平が欠席することは早くから分かっていた

実は中国政府高官を取材することにより、9月9日の北朝鮮の建国記念日の式典に、習近平国家主席は欠席することが、かなり早くから分かっていた。しかし、それは相当に深いインサイダー情報だったので、公開することはできなかった。

しかし、先ほど、日本時間の8時前に、CCTV(中央テレビ局)のニュースに注目しろという連絡があり、中国政府が公式に発表したことを知った。

習近平の特使として栗戦書が決まったことを、どう解釈するか

習近平の代わりに、チャイナ・セブン(中共中央政治局委員7人)の一人で党内序列ナンバー3の栗戦書(全国人民代表大会委員長)が行くことがわかったが、なぜ栗戦書なのかを、考察してみよう。

党内序列から言えば、ナンバー1は習近平で、ナンバー2は李克強(国務院総理)だ。習近平が行かないとして、もし李克強が行ったとしても、金正恩委員長と李克強がひな壇に並んでいる姿を想像してみるといい。何といっても中国政府(国務院)のトップである。トランプ大統領から「やはり北朝鮮の非核化を邪魔していたのは中国だ!」という誹(そし)りを受けることは免れないだろう。

もし習近平が行かないとすれば、本来なら、かつて北朝鮮に行っていたポスト劉雲山に相当する王滬寧(おう・こねい)が行くのが順当な決定だ。しかし、金正恩が3度も訪中したのに対して、失礼だという配慮がなされたものと解釈できる。

だからせめて、李克強の次の序列の栗戦書にしたのだと思う。

なぜ習近平は欠席するのか

冒頭に書いたように、習近平が欠席する理由は二つある。

一つはアメリカのポンペオ国務長官との交渉で、北朝鮮が提出した核申告リストのレベルが低いと中国が思っていて、満足していないからだ。早く完全に近いリストを提出して終戦宣言と同時交換をしてほしい。本気で核放棄をするのなら、今さら出し惜しみしてもしょうがないだろうと中国は思っている。

金正恩にしてみれば、完全な核申告をして全ての核やミサイルの位置が分かってしまったら、万一にもアメリカに裏切られたらお終いだという気持ちがあるのは理解している。いつまでもドナルド・トランプが大統領でいられるかも疑問だ。他の大統領に代わった時に、アメリカが考え方を変えないとも限らない。だから、金正恩としてはアメリカが先に、せめて「終戦宣言をする」と確約しなければ完全なリストを提出することはできない。

それも、習近平側は理解している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず

ビジネス

米債務持続性、金融安定への最大リスク インフレ懸念

ビジネス

米国株式市場=続伸、堅調な経済指標受け ギャップが

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米景気好調で ビットコイン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中