『新潮45』休刊の背景──貧すれば鈍する名門雑誌の最期
既に先行している『正論』(産経新聞社)、『WILL』(WAC)、『HANADA』(飛鳥新社)の「自称保守雑誌三巨頭」は、連載陣の細部に至るまで、「安倍支持」「反野党」「反左翼」「嫌韓・嫌中」などの古典的なまでのネット右翼迎合記事で徹頭徹尾締めくくられている。これは創刊当時からの該雑誌の姿勢が右派に軸を置いたモノだったのだから、当たり前だ。
これらの雑誌は、ネット右翼の中で、近年では特にCS番組やネットニュース番組などで直接書影が紹介されることにより、全体的な雑誌苦境の中でまだしも奮戦していると言って良い。部数減少で苦しむ『新潮45』が、この「自称保守雑誌三巨頭」の奮戦を傍らに観て、「四匹目のドジョウ」を狙ったと考えるのが妥当であろう。
しかし、「右傾化」後発の『新潮45』は、雑誌の「前半分」しかネット右翼迎合の内容にすることが出来ない宿命を背負っていた。なぜなら既に述べたとおり、創刊時からの穏健な讀物や漫画に期待する読者が一定数いるので、雑誌の前半分しか「ネット右翼迎合」に改造できないのである。ここに『新潮45』が、前半は過激なネット右翼路線、後半は穏健な讀物と連載陣で固める、という奇妙な『二重構造』を有した原因であると私は観る。
『新潮45』実際の部数減はどの程度だったのか
さて、『新潮45』の部数減の焦りが本誌前半の過激なネット右翼迎合記事を醸成させたとして、はたして『新潮45』の部数減は実際にどの程度だったのだろうか。実のところ確固とした数字がある。一般社団法人日本雑誌協会の統計によって、『新潮45』の過去10年に亘る部数の増減を観ていくことにしよう。
上図を観ても分かるとおり、約10年前の2008年4~6月期に43,000部弱を誇った『新潮45』の印刷部数は、2012年には25,000部の大台を割り込み、以後ほぼ回復すること無く、2016年10~12月期には20,000部すら割り込み、最新統計では16,800部に低迷した。よって過去約10年間で印刷部数は実に6割以上減少、という断頭台に立たされたのである。