インドネシア、首都の強盗増加に警察が強硬姿勢「抵抗すれば射殺!」
油断できない交通機関利用
ジャカルタではウーバーやゴジェック、グラブなどスマートホンのアプリで利用できるバイクや自動車の配車サービスが大人気だが、最近は配車サービスで呼んだタクシーでの強盗被害も増えているという。
女性一人が夜に車両を利用する場合、車内後方の荷物置き場に別の男性が隠れていたり、途中から無断で乗り込んできたりして金品を強奪するという手口だ。警察などでは夜の女性一人の利用を控えるよう呼びかけるとともに、もし利用する場合は乗車する前に車内の点検を求めている。
バイクの後席に乗るバイクタクシーはそうした被害が少ないものの、追い抜き際やすれ違いの際にハンドバックやリックが奪われる事件も多発しているという。
ジャカルタの日本大使館はこうしたタクシーなどの強盗、パンク強盗、スリ・置き引きなどの犯罪に対する注意警戒をホームページなどで呼びかけている。2018年1月にはジャカルタ市内の公共交通機関であるトランス・ジャカルタのバスを利用していた日本人が刃物による強盗被害に遭い現金やクレジットカードの入った財布を奪われる事件も起きている。
殺しのライセンスの危険性
インドネシアのジョコ・ウィドド政権は麻薬対策にも力を入れており、フィリピンのドゥテルテ大統領の施策をまねた訳ではないが、麻薬関連事案の対応には銃器の使用を躊躇することなく射殺も止むなし、との方針を全ての警察官に指示している。実際にジャカルタ西方の海岸で麻薬を密輸入しようとした台湾人がその場で射殺されている。
このほかテロ対策でも現場での射殺は頻繁に起きており、警察官による銃器使用、被疑者、犯人の射殺は相当の頻度で起きている。
今回「ストリート・クライム」対策には管区警察官からなる13チーム、首都圏警察官からなる3チームの合計16チームの1000人が投入され、8月3日まで市内各所で警戒、摘発に専門的に当たるとしている。
問題は警察官の射撃の腕前で、かつて警察官による威嚇射撃が致命傷になったり、近くにいた別人が負傷したりと事件が続発、マスコミが「警察官の射撃能力が低すぎる」との記事を掲載したことがある。
その際の警察側の言い分がすごい。「射撃は難しい、なんなら記者の皆さんも実際に射撃をしてみるといい。目標に的確に当てることがいかに困難か体験すれば、こんな記事は書けないだろう」。これに記者たちが「我々は記者であり射撃に関しては素人である。冗談じゃない」と提案を拒否したことは当然だ。
要するに「殺しのライセンス」を付与された警察官たちの射撃の腕にはいささか問題があるということで、007のような正確な射撃が期待できないのに治安を任せて大丈夫なのかという懸念が強く残っているのだ。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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