インドネシア、首都の強盗増加に警察が強硬姿勢「抵抗すれば射殺!」
凶悪な犯罪に立ち向かうインドネシアの警官たち、果たして彼らの射撃の腕前は? Antara Foto/ Didik Suhartono / via REUTERS
<増加する犯罪対策のため、ジャカルタの警察は警察官に「抵抗する者は射殺も止むなし」と殺しのライセンスを発効した>
インドネシアの首都ジャカルタの治安を預かる首都圏警察は、最近ジャカルタで急増している路上や住宅街での窃盗、強盗事件に対処するために要員を増員している。さらに容疑者逮捕に際して、もし抵抗するようなケースがあれば「射殺も止むなし」という強硬な姿勢で臨むよう指示をだしたことが分かった。
地元紙などは「首都警察官に射殺許可、殺しのライセンス付与」などとセンセーショナルに報道する事態になっている。
7月1日、ジャカルタ中心部のチュンパカプティ地区でバイクタクシーの客だった男性(37)が路上で強盗に遭い、殺害された。さらに翌2日には中央ジャカルタのスディルマン通りのトサリで強盗事件4件が連続して発生した。
こうした事態を受けて首都圏警察本部のアルゴ・ユウォノ報道官は地元マスコミに対して、7月3日に約1000人の警察官を増員して「特に夜間のストリート・クライム(路上犯罪)にあてる」としたうえで、警戒や巡回にあたる警察官に対しては「容疑者が事情聴取や逮捕の際に抵抗した場合、断固とした対応をとるよう警察長官からの指示があった。射殺も辞さないということである」と述べた。
ジャカルタに限らずインドネシアでは警察官の職務執行に関しては現金による賄賂で逮捕や検挙を免れようとするケースが多く、賄賂を受け取って見逃す警察官が存在することも事実である。しかし今回、アルゴ報道官は「(賄賂などの)交渉の余地は全くない」と容疑者側にも警察官側にも厳しい姿勢を改めて示した。
大統領警護隊員も被害に
6月8日にはジョコ・ウィドド大統領、ユスフ・カラ副大統領、さらに歴代の大統領経験者の身辺警護にあたる大統領警護隊の現職隊員が、北ジャカルタのマンガブサール地区で車を運転中に盗難の被害に遭う事件も起きていた。
手口はある意味昔ながらの典型的なもので、運転中に通りがかりのバイクの運転手から後輪のタイヤがパンクしている、と指摘され、道路脇に車を寄せてタイヤを点検中に別のバイクに乗った犯人がロックしていない車のドアを開けて車内のものが盗まれたのだ。
警護隊員もつい油断して車内にあったカバンが奪われた。これだけなら単なる盗難事件だが、問題になったのはカバンの中身。パソコンや外付けハードディスク、現金など総額で約20万円相当の物品が消えたのだが、ハードディスクにはジョコ・ウィドド大統領の「国家機密級」という重要経済政策のデータが入っていたことが分かり大騒動となった。通報を受けた警察が現在犯行グループを鋭意捜索中だが、容疑者逮捕にもデータ回収にも至っていない。