最新記事

米朝首脳会談

かつては「死の島」 米朝首脳会談の開催地セントーサ島のカペラホテルとは?

2018年6月10日(日)11時41分

芝生の下

カペラ・ホテルには、英王立砲兵連隊の将校らの宿泊所として使われた植民地時代のバンガロー2棟のほか、連隊の食堂があった。ホテルのウェブサイトによると、将校らは、日本軍の侵攻を前に食堂に面した場所に銀を埋めたという。

その後、一部はマレーシアによって回収されたが、「残りの行方はいまだ不明であり、芝生の下に眠っている可能性がある」とウェブサイトには記されている。

カペラ・ホテルは、シンガポールの資産家、クウィー家が経営する不動産開発会社ポンティアック・ランド・グループが所有する。昨年、リッツ・カールトン初代社長のホルスト・シュルツ氏から買い取ったものだ。

客室112室のほか、スイートルームやヴィラやマナーハウスもある。ベッドルームが3部屋ある植民地時代のマナーハウスの宿泊費は1泊1万シンガポールドル(約83万円)。このほか、ホテルの敷地にはプール3つやテニスコート、スパがある。

発表されてはいないが、米朝首脳がセントーサ島に宿泊する可能性は低いとみられる。

シンガポール政府は、もう1つの特別区として、市街中心部に近い地域を指定。そこにはいくつか高級ホテルも建ち並び、米朝両国の代表団が宿泊できる収容能力を備えている。

オーチャード地区には、主要国大使館の大半や国際刑事警察機構(インターポール)の拠点、分譲マンションや高級ブランド店やショッピングモール、怪しげなバーやマッサージパーラーがある。

米朝会談の会場として浮上していた主要ホテルのいくつかからほど近い場所にあるオーチャードタワーには、カンボジアやルーマニアの大使館があるが、夜に活気づく「ノーティーガール」や「トップ5」といった一連の施設も入っている。

そこからそう遠くない場所にあるシャングリラ・ホテルでは2015年、中国の習近平国家主席と当時の台湾総統である馬英九氏の歴史的会談が行われた。

また同ホテルでは先週末、インドのモディ首相やマティス米国防長官らが出席した毎年恒例のアジア安全保障会議(シャングリラ対話)が開催された。地元メディアは、トランプ大統領が同ホテルに宿泊する可能性があると報じている。

セキュリティーは、世界で最も安全な国の1つと位置づけられているシンガポールにとって最優先事項となるだろう。同国は近年、テロ対策を強化している。

米朝首脳はそれぞれセキュリティーチームを同行させるだろうが、グルカ兵を含む精鋭のシンガポール警察が会場や道路、ホテルの警備に当たると、シンガポールの要人向けセキュリティーに詳しい外交官らは話す。

「米朝首脳会談という唯一無二のイベントがもつ繊細さと特異性により、予測不可能なことはほぼ何であれ、会談自体に影響を及ぼしかねない」と、ラジャラトナム国際研究学院(シンガポール)のグラハム・オンウェブ研究員は語った。

*タイトルを変更いたしました(2018年6月14日)

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

Dewey Sim and Aradhana Aravindan

[シンガポール 6日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ政権は米国債の信用力に配慮を、シタデル創業

ワールド

トランプ氏とゼレンスキー氏また衝突、クリミア巡る考

ビジネス

アングル:揺らぐFRBの世界経済安定化機能、トラン

ワールド

米副大統領がローマ教皇称賛 政治的相違も「偉大な司
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負かした」の真意
  • 2
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学を攻撃する」エール大の著名教授が国外脱出を決めた理由
  • 3
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    日本の10代女子の多くが「子どもは欲しくない」と考…
  • 6
    アメリカは「極悪非道の泥棒国家」と大炎上...トラン…
  • 7
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 8
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 9
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 10
    ウクライナ停戦交渉で欧州諸国が「譲れぬ一線」をア…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 4
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 7
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 8
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はど…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中