目には目を! トランプの核合意破棄へイランが取りうる「報復シナリオ」
レバノン
ヒズボラは2006年、イスラエルとの境界線付近で34日間交戦した。イスラエルと米国の政府関係者によると、イランは現在、ヒズボラに対し、精密誘導ミサイル製造工場の建設や、長距離ミサイルへの精密誘導システム装着などで支援を行っている。
ヒズボラがイランの同盟先であるシーア派武装勢力の多くを束ねているシリアにおいて、イスラエル部隊はたびたびヒズボラを攻撃している。イスラエルとイランによる言葉の応酬も、最近激しさを増している。
ヒズボラとイスラエルの双方が軍事衝突に関心はないとしているが、緊張の高まりがレバノン戦争の再発を引き起こす事態は容易に起こり得る。
ヒズボラは昨年、イスラエルがシリアやレバノンに戦争を仕掛ければ、イランやイラクなどから数千人の戦闘員が終結すると警告し、シーア派武装勢力がヒズボラ救援のためレバノンに駆け付ける可能性を示唆した。
ヒズボラはまた、レバノンにおける主要政治勢力の1つとなっておおり、6日行われた議会選の非公式開票結果によれば、ヒズボラと連携する政治勢力が過半数を超える議席を確保する見通しだ。現段階では、ヒズボラは西側政府が支持するハリリ首相ら政敵とも協力する姿勢を見せている。
だがもし核合意が崩壊すれば、イランがヒズボラに政敵を孤立させるよう圧力をかける可能性があり、そうなればレバノン情勢が不安定化すると専門家は懸念する。
「ヒズボラは、実質的にレバノンの政治を支配している。もしそうした(ヒズボラが首相らを孤立させる)事態になれば、純粋な嫌がらせになるだろう」と、ベイルートにあるアメリカン大学のHilal Khashan教授は言う。
イエメン
イランがこれまで、イエメンに対する直接の軍事介入を認めたことはない。だが米国やサウジアラビア政府の関係者は、イランはイエメンで活動する武装組織「フーシ派」にミサイルなどの武器を供与していると指摘。フーシ派は、イエメンに対する空爆の報復として、リヤドやサウジの原油関連施設に向けてミサイルを発射している。
イランとサウジは、中東地域で激しい勢力争いを繰り広げている。イラン核合意の支持派は、サウジとの対立が交戦に発展するリスクを、この合意が食い止めていると主張する。
もし合意が崩壊すれば、イランがフーシ派への支援を拡大することで、サウジやアラブ首長国連合などの湾岸同盟国から軍事的対抗措置を招く恐れがある。
「イランがフーシ派を支援する事態は想定外ではない」と、Khashan教授は話す。