最新記事

核開発

目には目を! トランプの核合意破棄へイランが取りうる「報復シナリオ」

2018年5月10日(木)16時00分


レバノン

ヒズボラは2006年、イスラエルとの境界線付近で34日間交戦した。イスラエルと米国の政府関係者によると、イランは現在、ヒズボラに対し、精密誘導ミサイル製造工場の建設や、長距離ミサイルへの精密誘導システム装着などで支援を行っている。

ヒズボラがイランの同盟先であるシーア派武装勢力の多くを束ねているシリアにおいて、イスラエル部隊はたびたびヒズボラを攻撃している。イスラエルとイランによる言葉の応酬も、最近激しさを増している。

ヒズボラとイスラエルの双方が軍事衝突に関心はないとしているが、緊張の高まりがレバノン戦争の再発を引き起こす事態は容易に起こり得る。

ヒズボラは昨年、イスラエルがシリアやレバノンに戦争を仕掛ければ、イランやイラクなどから数千人の戦闘員が終結すると警告し、シーア派武装勢力がヒズボラ救援のためレバノンに駆け付ける可能性を示唆した。

ヒズボラはまた、レバノンにおける主要政治勢力の1つとなっておおり、6日行われた議会選の非公式開票結果によれば、ヒズボラと連携する政治勢力が過半数を超える議席を確保する見通しだ。現段階では、ヒズボラは西側政府が支持するハリリ首相ら政敵とも協力する姿勢を見せている。

だがもし核合意が崩壊すれば、イランがヒズボラに政敵を孤立させるよう圧力をかける可能性があり、そうなればレバノン情勢が不安定化すると専門家は懸念する。

「ヒズボラは、実質的にレバノンの政治を支配している。もしそうした(ヒズボラが首相らを孤立させる)事態になれば、純粋な嫌がらせになるだろう」と、ベイルートにあるアメリカン大学のHilal Khashan教授は言う。

イエメン

イランがこれまで、イエメンに対する直接の軍事介入を認めたことはない。だが米国やサウジアラビア政府の関係者は、イランはイエメンで活動する武装組織「フーシ派」にミサイルなどの武器を供与していると指摘。フーシ派は、イエメンに対する空爆の報復として、リヤドやサウジの原油関連施設に向けてミサイルを発射している。

イランとサウジは、中東地域で激しい勢力争いを繰り広げている。イラン核合意の支持派は、サウジとの対立が交戦に発展するリスクを、この合意が食い止めていると主張する。

もし合意が崩壊すれば、イランがフーシ派への支援を拡大することで、サウジやアラブ首長国連合などの湾岸同盟国から軍事的対抗措置を招く恐れがある。

「イランがフーシ派を支援する事態は想定外ではない」と、Khashan教授は話す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 9
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中