目には目を! トランプの核合意破棄へイランが取りうる「報復シナリオ」
条約
核開発を巡り、イランにはいくつか選択肢がある。
イラン政府関係者は、選択肢の1つとして、核兵器の拡散防止を目的とする核拡散防止条約(NPT)から完全に脱退することも検討していると述べている。
イランの最高指導者ハメネイ師は、核兵器開発に関心はないとしている。だがもしイランがNPTから脱退すれば、世界を警戒させることは間違いない。
「そうなればイランは孤立し、破滅的な方向に向かうだろう」と、米シンクタンク大西洋評議会のAli Alfoneh上級研究員は言う。
仮にイランがNPTから脱退しなくても、核爆弾の原料製造につながるとして核合意で厳しく制限されているウラン濃縮活動を活発化する可能性をイランは示唆している。現在の核合意では、イランは濃縮度を3.6%以下にとどめなければならない。
2015年の核合意の一環で、イランは20%の濃縮ウランの生産を止め、貯蔵していた濃縮ウランの大半を手放している。
濃度20%のウランは、民生用の原子炉燃料として必要な濃度である5%を大きく上回るが、核爆弾を作るのに必要な高濃縮ウランの濃度80─90%には届かない。
イランのサレヒ原子力庁長官は最近、イランは合意前よりも高濃度のウランを生産することが可能だと発言している。
イランによる対応は、米国による合意破棄について、他の合意署名国がどういった反応を示すかにも影響されると、アナリストは話す。
その上で焦点となるポイントは、国連安保理が全会一致で承認した国際的な約束事である核合意の下で自国企業がイランとの取引を続けることにフランスやドイツがどの程度強い姿勢を見せるか。シリアで手を組むロシアがどれほど外交的に支援するか。また、巨大経済圏構想「一帯一路」にイランをつなぎとめる意欲がどれだけ中国にあるか、だ。
仮にトランプ政権が、制裁を再開し、違反者を米金融システムから締め出すと脅せば、それが「踏み絵」となるだろう。他の核合意署名国の中では、最大のイラン産原油輸入国である中国だけが、無傷でいられるだろう。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)
[ベイルート 3日 ロイター]
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