イラン・ハメネイ師がイスラエルとアメリカに報復を警告
メーデーを翌日に控え、ハメネイ師の演説を聞きに集まったイランの労働者たち Khamenei.ir
<シリア政府軍の関連施設攻撃を受けてイラン最高指導者がアメリカの介入を強く非難。報復も辞さないと警告した>
シリアで4月29日、アサド政権軍の複数の施設がロケット攻撃を受け、支援に入っていたイラン人戦闘員26人が死亡したことについて、イランの最高指導者アリ・ハメネイ師はアメリカ、イスラエルとサウジアラビアを非難。これらの国々が、イスラム世界を分断させようと共謀していると主張した。
ハメネイは、メーデーの前日である4月30日、労働者たちを前に演説。アメリカ主導の経済制裁は、シーア派イランの体制の弱体化が狙いであり、それに対抗するためには地元経済を支えることが重要だと強調した。またアメリカは、地域におけるスンニ派の大国サウジアラビアを操ってイランを追い落とそうとしている、とも言った。
ハメネイの公式ウェブサイトによれば、ハメネイは「アメリカは我々の地域に紛争を起こすために、サウジアラビアを煽っている。同じイランの敵でもイスラエルではなくサウジアラビアを煽るのは、イスラム教徒同士を争わせたいからだ」と主張。
「これらの国が賢明ならば、イランとの争いには手を出さないだろう。イランとの戦争に突入すれば、彼らは確実に敗北することになる。アメリカは、イラン革命よって生まれたイスラム共和制と衝突して犠牲を出すことは避けたいはずだ」
シリアで拡大する影響力
イランは長年、パレスチナ人が領有権を主張する土地の帰属問題をめぐってイスラエルと対立関係にある。アメリカとの確執の原因は、1953年にCIAが支援してイランに親欧米派の絶対君主制を復活させた軍事クーデターだ。
1979年のイラン革命で王政が崩壊したときは、テヘランにあるアメリカ大使館が革命派の学生らに占拠され職員は400日以上にわたって人質にとられた。
これ以降、アメリカとイランは数十年にわたって敵対関係にある。2015年にバラク・オバマ米大統領(当時)の主導でイランと核問題をめぐる枠組み合意が結ばれた時期は例外的だ。
ドナルド・トランプ大統領はイランに対してより厳しい姿勢を取っている。彼はオバマ時代の合意について内容がイランに甘いと指摘し、またイランが合意を悪用して、国外の民兵組織に対する支援や国内の弾道ミサイル開発計画を強化していると非難してきた。
イランは、イラクおよびシリア各地でイスラム過激派組織ISIS(自称イスラム国)と戦った。この中でイランが支援する各勢力が徐々に影響力を強め、イスラエルとサウジアラビアは、これが自国の安全保障を脅かしていると恐れる。