マレーシア航空めぐる2つのミステリー 明暗分かれる原因判明と捜索打ち切り
こうした膠着状態を受けてマレーシアのナジブ前政権は2017年1月17日に捜索中止を発表した。それまでに捜索活動に投入された約166億円の大半をマレーシアが負担していたことから財政的に厳しくなったことも一因とされている。
その後ナジブ政権は、海洋探査を手掛ける米企業「オーシャン・インフィニティ」との間で「発見に至らない場合は報酬を請求しない」との条件で契約、捜索活動は継続されていた。
そしてこの5月23日、政権交代を実現し、新内閣発足を受けて開かれたマハティール首相の初閣議で、直面する財政難を克服するために、(1)1万7000人の契約公務員の解雇、(2)全閣僚の報酬10%カット、(3)クアラルンプール・シンガポール間の高速鉄道計画の見直し、などの財政再建政策に加えて、MH370便捜索活動の見直しが協議されたという。
その結果、必要経費支払いが財政を圧迫していたとされる捜索活動を打ち切る方針が確認され、29日をその最終期限とすることとなった。
乗客の遺族などからの反発が予想されるものの、これにより約4年と5カ月に及んだMH370の捜索活動はピリオドを迎えることになり、その機体と乗員乗客は航空史上に「永遠のミステリー」として残されることとなった。
ウクライナでの撃墜はロシア軍のミサイルによるもの
MH370が消息不明になってから約4か月後の2014年7月17日、今度はオランダ・アムステルダム発クアラルンプール行きのMH17がウクライナ東部の高度1万メートル上空を巡航飛行中、突然レーダーから機影が消え、ドネツィク州グラボウォ村付近に墜落しているのが発見され、乗員乗客298人全員が死亡したことが確認された。
事件当時ウクライナ東部は政府軍と親ロシア派武装勢力による内戦状態で、衛星情報や情報機関の情報・調査、証言などからNH17が地上からのミサイル攻撃で「撃墜」されたことが判明した。
オランダ、ウクライナなど5カ国からなる合同調査チームは墜落原因の特定を捜査してきたが、5月24日に「ミサイルはロシア軍の第53対空ミサイル旅団が保有していたものがウクライナに持ち込まれ、それが発射された」との調査結果を発表した。