最新記事

朝鮮半島

一国二制度「連邦制統一国家」朝鮮?──半島問題は朝鮮民族が解決する

2018年4月3日(火)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

その一方、中国籍朝鮮族の独立がきっかけとなり、中国の少数民族独立を刺激し、中国の一党支配体制を崩壊させる危険性も孕んでいる。それも頭に入れながら、北朝鮮がこれまで提案してきた「連邦制統一国家構想」とその時の国際情勢を考察してみよう。

朝鮮半島「連邦制統一国家」の構想

1950年6月に朝鮮戦争が勃発したのは、あくまでも北朝鮮の金日成(キム・イルソン)(当時、首相)が朝鮮半島を統一しようとしたからだ(この詳細な経緯は『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』第3章に)。以来、北朝鮮が南北を統一しようと思わなかったことはない。これ自身は基本だ。

問題は、いかなる形で「統一国家」を構想するかである。

それをいくつかの段階に分けて復習してみよう。

1.第1回統一案:1960年8月

北朝鮮が最初に「連邦制統一案」を提案したのは1960年8月のことで、これこそは鄧小平が「中華民国」に対して提案した形と同じ「一国二制度」案だ。中華民国が拒否したので、そのモデルをイギリスのサッチャー(首相)に提案して、長い期間にわたる論議を経て、香港およびマカオの中国返還を達成した。その構想は「南北の政治体制を一定期間そのままにして、南北の政府代表から成る南北連邦制を構成する」というものだった。

これはちょうど、朝鮮戦争時の李承晩政権が崩壊した時期と一致している。李承晩(大統領)はあくまでも韓国が朝鮮半島を統一すると主張して、朝鮮戦争の休戦協定にも反対し、結果、休戦協定と同時に米韓軍事同盟を締結して在韓米軍の駐留を招いている。

2.第2回統一案:1972年9月

第2回目の「連邦制統一案」を北朝鮮が提案したのは1972年9月である。そのきっかけとなったのは、キッシンジャー(元米国務長官)の忍者外交により1972年2月に当時のニクソン大統領が訪中し、朝鮮戦争の敵国であった米中が握手したことだった。

これは「北朝鮮のために戦った中国」と「韓国のために戦ったアメリカ」が和解したことを意味するので、それなら南北和解もあってもいいかもしれないという要素は一つある。

しかし、ここで忘れてならないのは、このとき中ソ対立が激しく、北朝鮮はそれを利用して、専らソ連からの経済および技術援助を得ていたということだ。その意味で北朝鮮は米中和解から疎外されることになるので、米ソ対立という冷戦構造の中にあって、北朝鮮は孤立を恐れて「連邦制統一案」を提案したという事情がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック上昇、トランプ関税

ワールド

USTR、一部の国に対する一律関税案策定 20%下

ビジネス

米自動車販売、第1四半期は増加 トランプ関税控えS

ビジネス

NY外為市場=円が上昇、米「相互関税」への警戒で安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中