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『ペンタゴン・ペーパーズ』抵抗の物語は今と重なる

2018年3月30日(金)18時30分
フレッド・カプラン(スレート誌コラム二スト)

「今」に通じる部分も

映画終盤、最高裁がニクソン政権の差し止め請求を6対3で却下し、ワシントン・ポストとNYTに機密文書の公表再開を許可した後、裁判所から出てきたグラハムは群衆に囲まれ喝采を浴びる。若い女性も多くいて、自分たちの未来を切り開いてくれた先輩に憧れのまなざしを向ける。だが実際の判決後の写真には、笑顔のブラッドリーとグラハム以外写っていない。

それでも、一連の出来事は確かに米政治の転換点だった。ニクソンは権力を利用して報道の自由を差し止めた――トランプがやると脅していることを、彼は実際にやったのだ。それを最高裁が覆した。「国家安全保障」という言葉が政府の嘘と恥部の隠れみのとして世間に知れ渡ったのも、これが最初だった。

スクープの成功によってワシントン・ポストの経営は軌道に乗り、ブラッドリーとグラハムは編集室における真のパートナーになった。2人の信念と勇気ある行動がなければ、ウォーターゲート事件の真相は闇に包まれたままだったかもしれない。

多少のあらはあっても、テンポがよくユーモアとサスペンスもたっぷり。見る者を勇気づけ、筆者のようにウォーターゲート事件を機に新聞記者になった人間には感慨深い作品でもある。

本誌2018年4月3日号[最新号]掲載

© 2018, Slate

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