フェイスブックは個人情報悪用の張本人
ザッカ―バーグのフェイスブックはアメリカの歴史を変えたのかもしれない Robert Galbraith-REUTERS
<フェイスブックに登録した個人情報の第三者による不正使用が発覚――しかし問題の本質はフェイスブックのビジネスモデルそのものにある>
英ビッグデータ分析会社のケンブリッジ・アナリティカが14年に、フェイスブックのユーザーとその「友達」約5000万人分の個人情報を「研究目的」と称して取得し、「心理学的属性」を分析したという。それが16年の米大統領選挙でドナルド・トランプ陣営に利用されたかもしれない。イギリス政府は捜査に乗り出し、規制強化を求める声が高まり、フェイスブックの株価は問題発覚直後の3月19日に7%近く下落した。
しかし、この事件でフェイスブックが罪に問われたわけではない。個人情報の扱いに関する同社のポリシーが問われているわけではないし、同社の従業員が不正行為を働いた形跡もなく、そもそも大統領選挙にどれほどの影響を及ぼしたかも不明だ。
本件における同社の関与の度合いを考えれば、フェイスブックに向けられた世間の怒りは大き過ぎると思われるかもしれない。しかし怒るべき理由は別にある。フェイスブックが「誰に対しても」同様の行為を許していること、言い換えれば膨大なデータを売って稼ぐビジネスモデル自体が問題なのだ。
14年にケンブリッジ・アナリティカの依頼を受けて、ケンブリッジ大学の研究者アレクサンドル・コーガンは自身の作成した性格分析アプリを使ってデータを集めたわけだが、それを可能にしたフェイスブックの利用規約は一般に公開されており、よく知られている。
また同社の利用規約は非常に寛大で、アプリに登録したユーザーの「友達」のデータを開発者が収集することも許していた(問題発覚後に変更された)。
米紙ワシントン・ポストが指摘するように、ティンダー(デートアプリ)やファームビル(農園ゲームアプリ)のほか、12年の大統領選挙でのオバマ陣営も同じツールを使用して似たような情報を収集している。15年段階までは、これが同社の通常のビジネスだった。
コーガンの性格分析アプリを利用した人たちは、商業目的ではなく研究目的に使われると考えて個人情報の提供に同意していた(私見だが、フェイスブックはユーザーが「友達」の情報まで提供する行為を禁じておくべきだったと思う)。
フェイスブックによれば、規約違反が分かった時点で、コーガンとケンブリッジ・アナリティカに情報の破棄と、その確認を要請したという。ただしフェイスブック側に、本当に破棄されたかどうかを確認する方法があったかどうかは不明だ。