最新記事

生物化学兵器

元スパイ襲撃の神経剤「ノビチョク」、ソ連崩壊後の混乱で流出か

2018年3月24日(土)12時00分


旧ソ連の衛星国

1990年代には、毒性の高い化学物質がロシアの領土外に紛れ込んでしまう事態が複数回発生した。ウクライナ、カザフスタン、ウズベキスタンなど、ソ連崩壊後に新たに独立した国々に残された旧ソ連施設に残されていたものだ。

旧ソ連の化学兵器担当科学者であるミルザヤノフ氏によれば、「GosNIIOKhT」研究所で開発された神経剤「ノビチョク」は、ウズベキスタンのヌクスで実験が行われたという。

現在は米ニュージャージー州プリンストンで暮らすミルザヤノフ氏は13日、神経剤がロシア以外に拡散している可能性を認めつつも、スクリパリ氏への攻撃の裏にはロシア政府の存在があると考えている、とロイターとのインタビューで語った。

旧ソ連の化学兵器関連施設を抱え込む羽目に陥った旧ソ連の各共和国は、施設の保全確保という点で、ロシア政府以上に手薄だった。

2001年以降、ハナバードに空軍基地を建設するためにウズベキスタン入りした米軍部隊は、管理責任者のいないまま貯蔵されている古い軍需物資を発見。当時その場にいた人物が匿名を条件に語ったところでは、その軍需物資には、塩素その他の化学物質が含まれていることが判明したという。

化学兵器に詳しい人々によれば、1990年代以降は、西側の援助や、近隣諸国からロシアに兵器の備蓄が移され、ロシアが国家として安定したことにより、セキュリティは劇的に改善されたという。

化学兵器備蓄の廃棄を監督しているロシア産業貿易省は、ロイターに送付した声明のなかで、ロシアは国際公約を厳格に遵守し、米国よりも先に化学兵器の備蓄を100%廃棄した、と述べている。同省は、ソ連崩壊後の化学兵器の持ち出しに関する質問には回答しなかった。

兵器拡散を監視しているウクライナの国家治安機関は、ただちにコメントすることはない、と述べている。

ウズベキスタン外務省にもコメントを求めたが回答は得られなかった。かつて化学兵器施設だったパブロダル・ケミカル・プラントを運営するカザフスタンの国営原子力企業と、この企業を監督する同国エネルギー省からも、問い合わせへの回答は得られていない。

(Christian Lowe記者, Maria Tsvetkova記者、Anthony Deutsch記者、翻訳:エァクレーレン)

[モスクワ/アムステルダム 14日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ネトフリ、テレビの言語オプション強化 海外作品の視

ワールド

EU、米相互関税に対抗措置準備 欧州委員長「世界経

ビジネス

三菱商、今年度1兆円の自社株買い 28年3月期まで

ワールド

米財務長官、対イラン制裁で大手銀16行に警鐘
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中