元スパイ襲撃の神経剤「ノビチョク」、ソ連崩壊後の混乱で流出か
旧ソ連の衛星国
1990年代には、毒性の高い化学物質がロシアの領土外に紛れ込んでしまう事態が複数回発生した。ウクライナ、カザフスタン、ウズベキスタンなど、ソ連崩壊後に新たに独立した国々に残された旧ソ連施設に残されていたものだ。
旧ソ連の化学兵器担当科学者であるミルザヤノフ氏によれば、「GosNIIOKhT」研究所で開発された神経剤「ノビチョク」は、ウズベキスタンのヌクスで実験が行われたという。
現在は米ニュージャージー州プリンストンで暮らすミルザヤノフ氏は13日、神経剤がロシア以外に拡散している可能性を認めつつも、スクリパリ氏への攻撃の裏にはロシア政府の存在があると考えている、とロイターとのインタビューで語った。
旧ソ連の化学兵器関連施設を抱え込む羽目に陥った旧ソ連の各共和国は、施設の保全確保という点で、ロシア政府以上に手薄だった。
2001年以降、ハナバードに空軍基地を建設するためにウズベキスタン入りした米軍部隊は、管理責任者のいないまま貯蔵されている古い軍需物資を発見。当時その場にいた人物が匿名を条件に語ったところでは、その軍需物資には、塩素その他の化学物質が含まれていることが判明したという。
化学兵器に詳しい人々によれば、1990年代以降は、西側の援助や、近隣諸国からロシアに兵器の備蓄が移され、ロシアが国家として安定したことにより、セキュリティは劇的に改善されたという。
化学兵器備蓄の廃棄を監督しているロシア産業貿易省は、ロイターに送付した声明のなかで、ロシアは国際公約を厳格に遵守し、米国よりも先に化学兵器の備蓄を100%廃棄した、と述べている。同省は、ソ連崩壊後の化学兵器の持ち出しに関する質問には回答しなかった。
兵器拡散を監視しているウクライナの国家治安機関は、ただちにコメントすることはない、と述べている。
ウズベキスタン外務省にもコメントを求めたが回答は得られなかった。かつて化学兵器施設だったパブロダル・ケミカル・プラントを運営するカザフスタンの国営原子力企業と、この企業を監督する同国エネルギー省からも、問い合わせへの回答は得られていない。
(Christian Lowe記者, Maria Tsvetkova記者、Anthony Deutsch記者、翻訳:エァクレーレン)
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