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生物化学兵器

元スパイ襲撃の神経剤「ノビチョク」、ソ連崩壊後の混乱で流出か

2018年3月24日(土)12時00分

1995年の事件に関連してリンク容疑者が逮捕後に捜査官に提出した供述書をロイターが閲覧したところ、同容疑者は化学兵器プログラムの一環として生み出された毒物を保有しており、自宅のガレージに保管していたという。生計の足しとして、また借金返済のために、一度ならず毒物を売り渡していた、とリンク容疑者は述べている。

キベリディ氏殺害事件で用いられた毒物は、リンク容疑者の知人である元警察官の仲介で売却された。この毒物を、ペン箱の中に隠したアンプルに入れた、モスクワのベラルースキー駅で会った相手に渡した、と同容疑者の供述書にはある。

裁判の際、キベリディ氏の事業協力者の弁護士を務めたボリス・クズネツォフ氏によれば、リンク容疑者は「職権乱用」により執行猶予付き禁錮1年の刑を宣告された。

クズネツォフ弁護士は、自分の依頼人が無実であり、キベリディ氏を毒殺したのは、当時のロシア大統領ボリス・エリツィン氏に知らせることなく行動していた悪質な諜報関係者だと主張する。

同弁護士はさらに、この事件に関する資料は、スクリパリ氏暗殺未遂の捜査にも関連する可能性があると思われるため、英国当局に提供すると語った。ロイターでは、リンク容疑者に取材できなかった。

ソ連崩壊後の混乱

旧ソ連の化学兵器開発プログラムは、遠く離れた地方都市にまで広がる幅広い事業であり、公称4万トンという世界最大の化学物質を用意していた。

ソ連が消滅したことで、資金が底を突き、科学者たちの給与は数ケ月分も未払いとなった。職員の士気は低下する中で、各施設は政府の統制・監督がほとんど無いまま、生き残りを図らなければならなかった。

安全保障を専門とするワシントンにある調査機関スティムソン・センターが、業界関係者による談話をもとに1995年に発表した報告書によれば、これらの施設の物理的なセキュリティは穴だらけだったという。

同報告書によれば、鉄道駅から化学兵器関連施設への入口は施錠されていたものの警備員はおらず、場合によっては、たいした苦労もなく侵入できるような木製の扉と瓦ぶきの屋根を持つ建物に化学兵器が保管されていることもあった。

化学兵器は、不正開封防止装置のない格納庫に収められ、少量が抜き取られたとしても検知することは困難だった。

4年後にスティムソン・センターが発表した2回目の報告書では、給与が払われていた時代でさえ薄給に甘んじていた旧ソ連の化学兵器担当の科学者が、犯罪組織やテロリスト、あるいは「ならず者国家」に雇われることのリスクを強調していた。

「化学・生物兵器を扱う複合施設を通じて、ヤミ取引が成功する要素はすべて揃っている。それは、失業やポスト不足に悩む科学者や管理者、広範囲に拡散する貴重な物質、そしてセキュリティの甘さだ」と報告書は指摘する。

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