最新記事

ホロコースト

ポーランドでまた歴史否定発言「ユダヤ人は自らゲットーに行った」

2018年3月22日(木)18時00分
クリスティナ・マザ

第2次大戦中にユダヤ人を救ったポーランド人をたたえる石碑に詣でたモラウィエツキ首相  Agencja Gazeta/Patryk Ogorzalek/REUTERS

<ホロコーストに加担していない、というウソを法律にしたポーランドで、ますます脱線する歴史認識>

ホロコースト(ナチスのユダヤ人大虐殺)の最中、ポーランドのユダヤ人は強制収容されたのではなく、自ら進んでゲットーで暮らす道を選んだ。ポーランド人の隣人にうんざりしていたからだ──ポーランドの元政治家で現首相の父親がインタビューでそう語った。

「ユダヤ人をワルシャワ・ゲットーに追い込んだのは誰か知っているか? ドイツ人だと思うだろう。違う。ユダヤ人が自主的に行ったんだ。そこは別天地で、厄介なポーランド人と付き合わなくて済むと聞かされたからだ」

ポーランドのマテウシュ・モラウィエツキ首相の父親で、元上院議員のコルネル・モラウィエツキはポーランドのオンライン誌Kultura Liberalnaにそう語った。

ポーランドでは今年2月、ホロコーストにポーランド人が加担したという表現を禁止する法案が成立。モラウィエツキ政権は今、この新法をめぐり国際社会の激しい批判を浴びている。

批判には倍返し

第2次大戦中にポーランドではユダヤ人300万人が虐殺されたが、モラウィエツキ政権は自国には何の罪もないと主張。新法の下では、ポーランドにも責任があると言えば3年以下の懲役か罰金刑を科される。この法律の適用を除外されるのは科学的な調査と芸術作品だけだ。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、「歴史を書き換える試み」だとして猛反発。国際社会からも言論の自由を弾圧する悪法だと批判の声が上がっている。

モラウィエツキは法案成立後、「ホロコーストに協力したユダヤ人もいた」と述べ、イスラエルとの関係はさらに悪化した。

モラウィエツキ政権は、この法律が批判されるたび2倍にして反論し、さらに激しい批判を浴びた。モラウィエツキ首相は先日、フォーリン・ポリシーに論説を寄稿、この法律に対する国際社会の批判は誤解によるものだと主張した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダ、報復関税の一部免除へ 自動車メーカーなど

ワールド

米アップル、3月にiPhoneを駆け込み空輸 イン

ワールド

NATO事務総長「揺るぎない支援」再表明、オデーサ

ワールド

再送-黒海安保、トルコで15─16日に4カ国会合 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 6
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 7
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    そんなにむしって大丈夫? 昼寝中の猫から毛を「引…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中