銃規制のためには政治から立て直す、100万人集めた米高校生の驚くべき成熟度
高校3年生のジオン・ケリーは去年9月、双子の兄が射殺された事件について語った。「毎日、登下校が恐ろしくてたまらないみんなの代表です」とケリーは語り、ワシントンでは19歳未満の若者がこの1月だけで6人も射殺されたと言った。
涙をこらえながら、彼は演説をこう締めくくった。「僕の名前はジオン・ケリー。皆と同じで、もうたくさんだ」
でも何がたくさんなのか? たしかに銃撃はもうたくさんだ。でもそれだけではない。救いを求める地域の声に耳を貸そうともしない政治家ももうたくさん。問題に向き合う勇気もないくせに、解決不可能な問題なのだ、と逃げを打つ議員たちもたくさん。大人になればわかる、とあしらわれるのも、もうたくさんだ。
「分断されてたまるか」
それがはっきり伝わってきたのが、マージョリー・ストーンマン・ダグラス高校の生存者で運動のリーダー、デービッド・ホッグの発言だ。自分に世界を変える力があると思い至ったのだろう(それはたぶん間違ってはいない)。こうした場で話すのが初めてなのがよく分かる、簡潔だが大げさな言葉遣いで緊張気味の彼はこう言った。
「今日は春の始まりの日であり、明日は民主主義の始まりの日です。今こそ団結する時です。でもそれは民主党員や共和党員としてではありません。アメリカ人としてです。アメリカ人は同じ血の通った人間であり、同じ1つのこと、1つのことだけを心にかけます。それはこの国の、そして国を引っ張っていく子供たちの未来です。今、私たちを年齢で分断しようという動きがあります。宗教で、人種で、選挙区で、階層で分断しようという動きがあります。でもそんな試みは失敗するでしょう。私たちは団結できるはずです」
政治を超越するというホッグの宣言は、最初は眉唾ものに聞こえるかも知れない。「命のための行進」の掲げる政策プランは民主党支持層からは支持されているが、共和党支持層からは支持されていない。そもそも銃危機と呼ぶべき今の事態を招いた罪は、主として共和党にあることは誰でも知っている。
だがホッグは、いわゆる超党派の政策合意といったきれい事を説いているわけではない。民主党に共闘を呼びかけているのでもない。彼が望んでいるのは、議論のあり方を根本から変えることだ。民主党支持者が、ひいては共和党支持者たちも、自らを変える以外に選択肢がないような形で。
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