最新記事

中国

習近平はなぜ平昌五輪に出席しないのか?――中国政府関係者を直撃取材

2018年2月12日(月)10時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

Q:金正恩は「民族同士の問題として解決する」と強調していますね。

A:そこだよ!朝鮮民族だけの問題として解決させるという考え方は危険だ。

Q:(吉林省)延辺朝鮮族自治州にいる朝鮮族の独立を刺激するからですか?

A:それもある。中国の影響力を削ぎ、かつ中国に不安定要素をもたらそうという魂胆だ。しかし文在寅の力量では、まるで北に「拉致されてしまった」ようなもので、北の核保有を止める力などない。結局、北に核を持たせてしまう。

Q:だから先般、楊潔チ(国務委員)がワシントンでティラーソン国務長官と会談した時に、「中国は北朝鮮への制裁を支持する」と言ったのですか?この辺は、どうも中国が主張してきた「双暫停」(北朝鮮もアメリカも軍事行動を暫定的に停止して、話し合いの場に着け)と矛盾するように思われたのですが......。

A:中国の立場は複雑だ。何と言っても、隣り合わせで問題の国、北朝鮮が存在しており、その暴発に直接の影響を受ける。被害は甚大だ。だから慎重に動かねばならない。おまけに中朝は(軍事)同盟国でありながら、北は中国に友好的ではないという、雁字搦(がんじがら)めの関係にある。だから中国は独自の判断を慎重に行なっていかなければならない。その許される範囲内で国連安保理と歩調を合わせてきているつもりだ。しかし、それにしても、金正恩め!中国の言う通りにはしないというシグナルを出してきた。六カ国会談を離脱し、中国もアメリカも除外した「朝鮮民族だけによる解決」という美辞麗句を持ち出してきて、韓国を骨抜きにするつもりだ。文在寅は、金正恩に拉致されてしまったんだよ。北は「中国が希望する通り、対話による解決をするんだから、文句はないだろう!」と、中国に難題を投げつけてきている。

そんな冬季五輪に、習近平がノコノコと出かけるはずがないだろう!

以上だ。筆者の解説は控える。この会話から、賢明な読者は十分に読み取って下さるものと思う。

なお、「朝鮮民族による解決」に関しては、1月12日のコラム<南北対話「朝鮮民族の団結強化」に中国複雑>をご参照いただきたい。また劉延東氏の閉会式出席に関しては、まだ正式発表は何もないとのことだった。

endo-progile.jpg[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

この筆者の記事一覧はこちら≫

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:戦闘員数千人失ったヒズボラ、立て直しには膨大

ビジネス

NY外為市場=円が対ドルで6週間ぶり高値、日銀利上

ワールド

ゼレンスキー氏、陸軍司令官を新たに任命 内部改革の

ワールド

ヒズボラ指導者カセム師、停戦履行でレバノン軍との連
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    BMI改善も可能? リンゴ酢の潜在力を示す研究結果
  • 2
    ウクライナ前線での試験運用にも成功、戦争を変える新型ドローン・システム
  • 3
    エスカレートする核トーク、米主要都市に落ちた場合の被害規模は想像を絶する
  • 4
    バルト海の海底ケーブルは海底に下ろした錨を引きず…
  • 5
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 6
    バルト海の海底ケーブル切断は中国船の破壊工作か
  • 7
    ペットの犬がヒョウに襲われ...監視カメラが記録した…
  • 8
    定説「赤身肉は心臓に悪い」は「誤解」、本当の悪者…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    黒煙が夜空にとめどなく...ロシアのミサイル工場がウ…
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 4
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式ト…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 9
    「時間制限食(TRE)」で脂肪はラクに落ちる...血糖…
  • 10
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中