最新記事

日本政治

待ったなし「2025年問題」 財政再建先送りが招く社会保障費急騰

2018年1月23日(火)17時33分

1月23日、政府は、財政黒字化の達成可能時期を先送りした試算を公表した。これまで何度も「延期」してきたが、いよいよ正念場が近づいてきたとの声が識者から出ている。写真は国会で22日撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung Hoon)

政府は23日、財政黒字化の達成可能時期を先送りした試算を公表した。これまで何度も「延期」してきたが、いよいよ正念場が近づいてきたとの声が識者から出ている。団塊世代が後期高齢者入りし、社会保障費が急増する2025年が視野に入ってきたからだ。潜在成長率の引き上げが見込めず、社会保障費を含めた歳出削減もできず「25年問題」に直面すると、国民生活に大きな影響が出かねないとの懸念が浮上している。

停滞する改革機運、遅れる目標達成

「全体的な空気感として、改革モメンタムの低下を懸念している」ーー。安倍晋三首相が昨年秋、20年度の基礎的財政収支の黒字化達成を断念した際、社会保障改革ワーキンググループの民間委員のひとりは、財政改革の機運低下に警鐘を鳴らした。

昨年末の経済財政諮問会議では、榊原定征・経団連会長が、診療報酬と介護報酬の同時改定について「25年問題への道筋を示す非常に重要な改定。我々はマイナス改定を主張してきたが結果はプラス。もう一歩踏み込んでいただきたかった」と、厳しく指摘した。

高齢化社会の日本で財政再建は、歳出の3分の1を占める社会保障改革と表裏一体だ。

22年から25年にかけて団塊世代が75歳以上に突入すると、医療費が15年時点の1.5倍の35兆円に膨張するとの試算もある。社会保障費の急激な膨張により、財政の将来不安が現実となりかねない。

政府自身、社会保障費の増加を抑制するために、現在はその伸びを3年間で1.5兆円に抑制してきた。それも18年度で期限が終わる。

その後の抑制策については、今年6月をめどに政府が新財政計画に盛り込む予定であり、25年問題をどう乗り切るかの正念場となる。

しかし、政府高官のひとりは「歳出を緩めたい政治家は多い。6月までに方向性すらまとまるのか不安だ」と嘆く。背景には国民の反発があり、中堅官僚の中にも「財政再建の停滞の真犯人は国民」との声さえ聞かれる。

政府は、これまで歳出を拡大しても、高成長と税収増でカバー可能というシナリオを描き、基礎的財収支(PB)黒字化は、昨年の中長期の財政試算では25年度に達成可能との中長期試算を公表していた。

しかし、諮問会議民間議員からバブル期並みの高成長を前提としたシナリオは見直すべきとの意見が相次ぎ、今回は現実的な経済見通しに修正。実質2%成長を前提にした試算では黒字化も27年度に先送りされた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではなく「タイミング」である可能性【最新研究】
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 5
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    2人きりの部屋で「あそこに怖い男の子がいる」と訴え…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中