最新記事

日本政治

待ったなし「2025年問題」 財政再建先送りが招く社会保障費急騰

2018年1月23日(火)17時33分


金利急騰時、国民生活はどうなる

財政不安を招きかねない要因は、25年問題だけではない。世界的に金融緩和の修正が進んでいくことを前提とすれば、金利の上昇は避けられない。

日本総研の湯元健治副理事長の試算では、財政赤字を国内で穴埋め困難となるのは21─24年ごろ。政府の債務残高がこれまでのペースで増加すると、高齢化による貯蓄減少に伴い、政府債務残高が国民の金融資産残高を上回るためだ。

海外投資家の国債保有比率が上がり、金利が上昇し始める可能性も高くなる。債務残高が巨額のため、金利がわずかに上がっても、利払いが膨張する。

こうしたケースで、国民生活には何が起こるのか──。

東京大学大学院の福田慎一教授は「財政悪化による社会保障費の大幅カットなど、経済の混乱は不可避」とみている。福田教授は20%の消費税率でも黒字化は困難とみている。

湯本氏は、政府が大胆な福祉削減や大幅増税に踏み切れないケースでは、ハイパーインフレに陥る可能性があるという。国民はいくら働いても生活できなくなり、一番厳しいシナリオがやってくるとみている。

政府債務を帳消しに、海外経済学者重鎮が提言

団塊世代が後期高齢者となり始める22年まで4年程度。政府が社会保障の大胆な改革を策定し実行に移せるのか、タイムリミットは迫っている。

元英金融サービス機構(FSA)長官のアデア・ターナー氏は「根強いデフレ圧力と公的債務問題に対して、日本が取り得る最も有効な打開策」として「日銀は、保有国債の一部を無利子永久国債としてバランスシートの資産に計上し、実質的に『消却』すべきだ」と提言(1月10日配信のロイターのインタビュー)した。

昨年3月の経済財政諮問会議でも米ノーベル経済学賞受賞のジョセフ・E・スティグリッツ氏が招待され、同様の提言を行っている。

財政黒字化実現のタイミングが政府試算の都度に後ろ倒しとなる中、財政再建が益々困難になることが明らかなれば、事実上の日銀による財政ファインスを容認するこうした論調が広がりかねない。

(中川泉 編集:田巻一彦)

[東京 23日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガのご登録を!
気になる北朝鮮問題の動向から英国ロイヤルファミリーの話題まで、世界の動きを
ウイークデーの朝にお届けします。
ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中