最新記事

脱北

亡命の北朝鮮兵士は「ナイスガイ」 執刀医が語る人物像

2017年11月25日(土)11時14分

11月23日、南北軍事境界線を越えて13日に韓国側に亡命した若い北朝鮮兵士は、物静かで感じが良く、北朝鮮に送還される悪夢を見ていると、兵士の主治医が語った。写真は、脱北する際に銃撃され倒れた兵士。国連軍司令部が22日公表したビデオより(2017年 ロイター)

南北軍事境界線を越えて13日に韓国側に亡命した若い北朝鮮兵士は、物静かで感じが良く、北朝鮮に送還される悪夢を見ていると、兵士の主治医が23日語った。この兵士の名前は、「オー」という名字だけが知られている。

「彼はなかなかナイスガイだ」と、24歳の兵士の手術を執刀し治療を続けているJohn Cook-Jong Lee医師は話した。脱出する際に北朝鮮兵士の銃撃を浴びて重傷を負ったオー兵士は、国際的な関心の的になっている。

国連軍が22日に公表した脱出時の映像は、オー兵士が転げるようにして国境を越え、倒れて意識を失ったところを韓国兵に引きずられて運ばれる様子を捉えている。

病院到着以来、オー兵士と話をしたのはほぼ自身1人だと、インタビューに応じたLee医師は亜洲大学病院の自室でロイターに語った。数フロア離れた病室では、韓国の特殊部隊員や情報機関員に守られたオー兵士が横になっている。

Lee医師は、兵士の病室の壁に韓国の旗を掲げ、兵士を不安にさせるような話題を避けていると話す。オー兵士は、スープのような透明な流動食を初めて口にし、笑顔を見せたり、話したりして、両手を使うことができるという。だが19日には、苦痛の叫び声を上げて目を覚ましたといい、韓国当局者による護衛に今も安心していない様子だと、Lee医師は言う。

Lee医師によると、オー兵士は高等教育を終えてすぐの17歳の時に北朝鮮軍に入隊したと明かした。オー兵士の髪型は米海兵隊員のような刈り上げで、Lee医師が「韓国海兵隊に入ったらどうだ」と冗談を言うと、笑顔を見せた後に、2度と軍隊に戻りたくないと話したという。

医療チームは、何日もかけてオー兵士の体から少なくとも銃弾4発の破片を取り除き、傷ついた内臓を縫合し、結核やB型肝炎、大量の寄生虫などの既往症を治療してきた。

「彼はなかなか頑丈な男だ」と、Lee医師は言った。

オー兵士の亡命後、北朝鮮は軍事境界線の警備にあたる兵士を全て入れ替えたようだと、韓国情報筋は23日に聯合ニュースに語った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中