最新記事

脱北

亡命の北朝鮮兵士は「ナイスガイ」 執刀医が語る人物像

2017年11月25日(土)11時14分


肺虚脱

先進的な医療機器を備え、訪韓中の米大統領を含めた要人治療の実績で知られる同病院に米軍ヘリで運ばれて到着した時、兵士個人について分かっている情報は何もなかったと、Lee医師は言う。

搬送中、米軍ヘリの医師はオー兵士の救命に全力をあげ、つぶれそうな状態の肺を救うために胸部に巨大な針を刺していた。

オー兵士はすぐさま診察室に運ばれ、医師らは大量の内臓出血を確認した。「ためらっている時間はないことが分かった」と、Lee医師は23日夜、その診察室で語った。

銃弾を取り除き、傷を縫合するのに2回の大きな手術が行われ、最大12リットルの血液が輸血された。人体の血液量は、通常その半分程度だ。

「命を救ってくれ、これほどの血液を献血してくれた韓国人にとても感謝していると彼は私に話してくれた」と、Lee医師は言った。

病室に韓国のポップ音楽をかけ、米国の映画やテレビ番組を見せているが、ニュースには一切触れさせていないという。

鑑賞したなかでは、米仏合作のアクション映画「トランスポーター3」や、米コメディー映画の「ブルース・オールマイティ」、米ドラマの「CSI:科学捜査班」が気に入った様子だったと、Lee医師は言う。

傷痕

ほとんどの脱北者は、韓国に到着すると、情報当局の事情聴取を受けた後、韓国での生活に適応するための教育施設で3カ月を過ごす。その後、政府や地方自治体から現金700万ウォン(約70万円)を1年間支給され、住宅や教育支援のほか、職業訓練を受ける。

脱北者の安全を守るため、1人1人に担当の警察官がつく。

完全に回復しても、オー兵士には一生傷痕が残ると、Lee医師は言う。

なかでも、銃弾でずたずたになり7カ所も縫合が必要だった大腸の傷は、長く残るという。「患者には生涯にわたる健康問題になる。食べる物に細心の注意が必要だ」

今後発症する可能性のある合併症のほか、Lee医師はオー兵士の心理的な回復も心配している。すでに、北朝鮮に送還される悪夢を見たと、オー兵士は話したという。

Lee医師は、早く事情聴取を行いたい考えの韓国軍幹部に対し、オー兵士の回復を待つよう頼んだという。

「この北朝鮮の若者はどこへも行かない。韓国にとどまるのだから、急ぐ必要はない」

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

Josh Smith Heekyong Yang

[ソウル 23日 ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2017トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




1128-thumb500.png【本誌11/28号】特集:保存版 北朝鮮の歴史

核・ミサイル開発に日本人拉致問題、テロ活動...... 不可解過ぎる「金王朝」を歴史で読み解く

北朝鮮 ストーリーで読む金王朝の歴史
タイムライン 北朝鮮史年表1948-2017
解説 今こそ知りたい10のテーマ
1.金王朝 北を牛耳る華麗なる一族
2.朝鮮戦争 300万人が死んだ米ソ代理戦争
3.朝鮮労働党 金一族の理念を実現する「道具」
4.テロ活動 世界を驚愕させた蛮行の数々
5.中朝関係 血の友情のまぼろし
6.南北関係 対立と融和の果てに北は韓国を無視
7.主体思想 孤立の元凶か、生みの親も亡命
8.核・ミサイル開発 核保有国への野望は60年代から
9.経済危機 貿易額の推移に表れる栄枯盛衰
10. 拉致問題 安倍が取り戻せない残された被害者
詳しくはこちら=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

従来の貿易システム「失われた」 WTO事務局長、改

ワールド

ECB総裁、原油供給混乱の長期化を警告 早期正常化

ワールド

イラン、スペインは「国際法順守」 ホルムズ海峡巡る

ワールド

欧州各国とカナダの防衛費、25年に20%増=NAT
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終回に世界中から批判殺到【ネタバレ注意】
  • 3
    「俺たちはただの人間だ」――BTSが新アルバム『ARIRANG』に託した想い、全14曲を【徹底分析】
  • 4
    意外と「プリンス枠」が空いていて...山崎育三郎が「…
  • 5
    デンマーク王妃「帰郷」に沸騰...豪州訪問で浮かび上…
  • 6
    まずサイバー軍が防空網をたたく
  • 7
    トランプが誤算? イラン攻撃延期の舞台裏、湾岸諸国…
  • 8
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 9
    「予想よりも酷い...」ドラマ版『ハリー・ポッター』…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 1
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公開...母としての素顔に反響
  • 2
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 3
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラリアの「NVES規制」をトヨタが切り抜けられた理由
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 6
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」…
  • 7
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する…
  • 8
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 9
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 10
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中