トランプ籠絡で習近平は高笑い
11月8日に故宮を訪れたトランプ夫妻と習夫妻 Jonathan Ernst-REUTERS
<手厚い接待を受けたトランプは対中批判を封印。中国は外交上の勝利を国内外に強く印象付けることに成功した>
ワシントン・ポスト紙の北京支局長を務めたジャーナリストのジョン・ポムフレットは最近の同紙への寄稿の中で、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席に向けて警告を発した――「アメリカ大統領の虚栄心をくすぐるだけで」米中関係の「危機を回避」できると思うな、と。
しかし、習の考えは違うらしい。この方法を実践すれば、単に危機を回避できるだけにとどまらず、勝利を手にできると思っているようだ。
実際、今回のドナルド・トランプ米大統領の中国訪問により、中国は対米関係だけでなく、国内的にも国際的にも大きな勝利を収めたと、少なくとも中国政府はみている。
はっきり言えるのは、習が「虚栄心をくすぐる」ことにより、トランプのハートをつかんだということだ。中国はトランプを「国賓を上回る」待遇でもてなし、11月8日には明朝と清朝の皇帝の居所だった北京の故宮(旧紫禁城)で夕食会も開いた。49年の共産中国建国以来、故宮に外国首脳を招いて夕食会が行われたのは初めてだ。
中国側は夕食会の内容について詳細を明らかにしていないが、トランプは「最高以上」だったと述べている。翌9日には、首脳会談前に習を持ち上げた。「昨晩の会合は本当に最高だった。そして、夕食会はそれに輪を掛けて素晴らしかった......美しいご夫人と、妻のメラニアと共に一瞬一瞬を楽しんだ」
トランプはツイッターへの書き込みでも、中国を繰り返し称賛した。しばらく、自らのツイッターアカウントの背景画像を習と彭麗媛(ポン・リーユアン)夫人と一緒に写った写真に替えていたほどだ。
ビジネスの面では、トランプの訪中に合わせて米中の企業間で総額2534億ドルの商談がまとまった。これは、米中貿易の歴史上で過去に例のない規模だ。中国の鐘山(チョン・シャン)商務相は、この成果について「本当に奇跡的な出来事」だとたたえた。