対北朝鮮交渉の時間切れ迫る 対話模索する米国務省担当の孤立無援
米朝間の緊張に拍車をかけるように、米戦略爆撃機2機が2日、韓国上空で演習を行った。これに続いて、韓国の情報機関から、北朝鮮が新たなミサイル発射を準備している可能性があるとの報告があった。
複数の米当局者は、試射されたミサイルを迎撃することも選択肢の1つとして検討されているが、それに伴うリスクについて政権内でも意見が割れている、と非公式に語っている。
こうした状況の真っ只中に置かれているのが、32年の外交経験を持つ、物腰の柔らかなベテランで、オバマ政権末期となる約1年前に現在のポストに就いたユン特別代表だ。
ユン特別代表は、トランプ大統領の乱暴な発言に加え、大統領側近の不協和音にも苦慮している。武力威嚇は本当に正恩氏に自制を強いるのか、また軍事行動の発動条件は何かについて、意見が割れていると複数の政府当局者が匿名を条件に明らかにした。
ユン特別代表が直面する難題は、定期的な訪問先のソウルでも表面化している。トランプ大統領によるアジア歴訪の2番目の訪問地だ。
複数の韓国政府当局者は、北朝鮮問題を巡るユン特別代表の外交努力が、ホワイトハウスから実質的な支援を得ていないのではないかという懸念を表明している。
「彼にとって状況が容易でないのは明らかだ」と韓国の外交官は語る。「ユン氏は(北朝鮮との交渉役として)まさに適任だが、トランプ大統領がそうしたプロセス全体を台無しにしつつある」
ティラーソン米国務長官は9月30日、記者団に対し、米国は外交による解決機会を探っていると述べたが、トランプ氏は「時間の無駄だ」とツイッターに投稿し、これを一蹴した。
そのなかで、米政権内で対北朝鮮の最強硬派の1人と目され、定期的に諜報関連事項について大統領にブリーフィングを行う米中央情報局(CIA)のポンペオ長官の存在感が高まりつつあるようだ。
ポンペオ長官はトランプ大統領に対し、米国の軍事的な圧力によって、正恩氏は非核化に向けた要求に従わざるを得なくなるという分析結果を提示していると北朝鮮関連の協議に詳しい複数の当局者は語る。
ただし、米情報機関当局者の一部は、非公式にこの立場に異議を唱えている。CIAはこの件についてコメントしなかった。