最新記事

米朝関係

対北朝鮮交渉の時間切れ迫る 対話模索する米国務省担当の孤立無援

2017年11月8日(水)17時15分

米朝間の緊張に拍車をかけるように、米戦略爆撃機2機が2日、韓国上空で演習を行った。これに続いて、韓国の情報機関から、北朝鮮が新たなミサイル発射を準備している可能性があるとの報告があった。

複数の米当局者は、試射されたミサイルを迎撃することも選択肢の1つとして検討されているが、それに伴うリスクについて政権内でも意見が割れている、と非公式に語っている。

こうした状況の真っ只中に置かれているのが、32年の外交経験を持つ、物腰の柔らかなベテランで、オバマ政権末期となる約1年前に現在のポストに就いたユン特別代表だ。

ユン特別代表は、トランプ大統領の乱暴な発言に加え、大統領側近の不協和音にも苦慮している。武力威嚇は本当に正恩氏に自制を強いるのか、また軍事行動の発動条件は何かについて、意見が割れていると複数の政府当局者が匿名を条件に明らかにした。

ユン特別代表が直面する難題は、定期的な訪問先のソウルでも表面化している。トランプ大統領によるアジア歴訪の2番目の訪問地だ。

複数の韓国政府当局者は、北朝鮮問題を巡るユン特別代表の外交努力が、ホワイトハウスから実質的な支援を得ていないのではないかという懸念を表明している。

「彼にとって状況が容易でないのは明らかだ」と韓国の外交官は語る。「ユン氏は(北朝鮮との交渉役として)まさに適任だが、トランプ大統領がそうしたプロセス全体を台無しにしつつある」

ティラーソン米国務長官は9月30日、記者団に対し、米国は外交による解決機会を探っていると述べたが、トランプ氏は「時間の無駄だ」とツイッターに投稿し、これを一蹴した。

そのなかで、米政権内で対北朝鮮の最強硬派の1人と目され、定期的に諜報関連事項について大統領にブリーフィングを行う米中央情報局(CIA)のポンペオ長官の存在感が高まりつつあるようだ。

ポンペオ長官はトランプ大統領に対し、米国の軍事的な圧力によって、正恩氏は非核化に向けた要求に従わざるを得なくなるという分析結果を提示していると北朝鮮関連の協議に詳しい複数の当局者は語る。

ただし、米情報機関当局者の一部は、非公式にこの立場に異議を唱えている。CIAはこの件についてコメントしなかった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ関税、英ではインフレよりデフレ効果=グリー

ワールド

ロシア中銀、金利21%に据え置き 貿易摩擦によるイ

ビジネス

米、日本などと「代替」案協議 10%関税の削減・撤

ワールド

トランプ氏側近特使がプーチン氏と会談、ロシア「米ロ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 5
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】世界で最もヒットした「日本のアニメ映画…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中