対北朝鮮交渉の時間切れ迫る 対話模索する米国務省担当の孤立無援
11月3日、米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表(写真右)は、米国で最も苛酷な外交任務を課せられている。対話を望まない自国大統領と、耳を傾ける素振りすら見せない敵国との板挟みになっているからだ。写真は都内で4月、代表撮影(2017年 ロイター)
米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表は、米国で最も苛酷な外交任務を課せられている。対話を望まない自国大統領と、耳を傾ける素振りすら見せない敵国との板挟みになっているからだ。
経験豊富なユン特別代表は、朝鮮半島における破滅的な戦争リスクを抑えるという意味で、米外交における第1の希望かもしれない。とはいえ、北朝鮮対応を巡り政権内の意見は分裂している。
他方、北朝鮮の若き指導者、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長も、少なくとも米国本土を攻撃可能な核弾頭搭載ミサイルの開発が完了するまでは、交渉の意志を見せようとしない。
こうした状況にもかかわらず、韓国生まれのユン特別代表は同僚らに対し、自身の外交努力によって北朝鮮の核・ミサイル開発を巡る危険な米朝対立を鎮静化できるとの期待を表明している。米韓両国の現旧当局者や外交官ら10数人へのインタビューで明らかになった。
もっとも、彼らの大半は悲観的だ。
「ただの夢想家にすぎない」。米政府当局者は皮肉な調子で言う。
「どうにかなるとは思えない」と別の当局者も口を揃える。ただしこの当局者は、直接交渉を公式に拒否しているトランプ大統領の足を引っ張るように見えない限り、ユン代表が、ある程度のレベルで北朝鮮との関係を保つことは依然として有意義ではないかと語った。
米政府当局者4人によれば、トランプ大統領は、自ら武力行使をちらつかせて脅したことで、北朝鮮は屈服し、核兵器・ミサイル開発プログラムを抑制するだろうと側近に語ったという。だが、米国の情報機関の大半はこうした見解に賛同していない。
その一方で、ユン特別代表は国連の場で北朝鮮当局者との直接対話を水面下で模索しており、同国で拘束されている米国民の解放以外の問題についても協議する任務を負っている、と国務省の高官は今週ロイターに語った。
ユン代表は6月、約1年半にわたり北朝鮮で拘束されていた米国人学生オットー・ワームビアさんの解放を実現したが、ワームビアさんは昏睡状態で帰国し、数日後に死亡した。
「時間切れが迫っている」
「(北朝鮮危機に関して、世界には)時間切れが迫っている」と側近の高官が警鐘を鳴らすなか、トランプ大統領は3日アジア歴訪を開始。
その舞台裏では、ユン特別代表が、今にも途絶えそうなコミュニケーション回路を維持しようと努めている。それがあれば、米朝どちらか一方の誤算が、武力衝突にエスカレートすることを防げるかもしれないからだ。