北朝鮮危機、ニクソン訪中に匹敵する米中合意の可能性
もし中国が、外交面、経済面で北朝鮮に対する影響力を徹底的に行使して金正恩政権を核開発断念に追い込み、検証可能な方法で核開発放棄の要求に従えば、アメリカは北朝鮮を国家として承認し、経済支援を行い、将来的に2万9000人の駐韓米軍を撤退させることに合意するという内容だ。これには、北朝鮮の長年にわたるアメリカへの要求が集約されている。
この構想の土台になっているのは、ティラーソンが5月に説明した対北朝鮮政策だ。ティラーソンはこう言った。「アメリカは北朝鮮の政権交代も、政権崩壊も、朝鮮半島再統一の加速も求めない。(南北朝鮮を隔てる)北緯38度線の北側に米軍を派遣する理由も求めない」
戦争ではなく外交的偉業を
ティラーソンが「4つのノー」と命名したこの発言に、中国は注目した。中国共産党の一部は、アメリカはむしろこの4つすべての実現を目指しており、北朝鮮核危機を口実に金政権の崩壊するつもりだと信じている。だが中国共産党の幹部は米政府に対し、ティラーソンの構想は米中合意の土台になり得ると伝えた。
ジョージ・W・ブッシュ元米政権で国家安全保障会議(NSC)のアジア上級部長を務めたデニス・ワイルダーは、先日彼が北京で面会した中国政府の関係者は、ティラーソンの発言に対するトランプ政権の本気度を知りたがったという。ティラーソンはトランプを説得してから発言をしたのか、それともティラーソンの独断だったのか。「4つのノーに関する話題でもちきりだった」とワイルダーは言う。米国務省のヘザー・ナウアート報道官は記者会見で、もし北朝鮮が「検証可能で完全な」非核化を行えば、その後にトランプ政権はティラーソンが披露した構想の実現に取り組むと言った。
アメリカと中国が北朝鮮問題で手を打つには、まだ長い道のりがある。トランプ政権としても、トランプとキッシンジャーがその可能性について意見を交わしたとは公言しないだろう。だがトランプは大胆な行動が大好きだ。もし北朝鮮問題でそうしたければ、戦争をするより、歴史的な外交合意を目指す方が望ましい。キッシンジャーも8月に米紙ウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿した論説で、外交的解決に向けた米中の重大な取引を支持する立場を示した。「(朝鮮半島の)非核化は、経済制裁を強化するだけでは実現できない」「アメリカが中国との間で理解を共有するためには、最大限の圧力と実行可能な保証が必要だ」