ビンラディンの「AVコレクション」が騒がれる理由
テレビを見るウサマ・ビンラディンを撮影した映像より(2010年) REUTERS/Pentagon/Handout
<2011年の殺害から6年。アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンの隠れ家からの押収物をCIAが近々に公表する予定だが、"あれ"だけは公にしないとCIA長官が語った。新しい話でもない「ビンラディンのポルノ」が、なぜまた話題になるのか>
9.11同時多発テロを指揮したアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンの「隠しポルノ」の数々を、CIA(中央情報局)は開示しない――2001年の9.11テロから16周年を迎えた9月11日、マイク・ポンペオCIA長官はFOXニュースのインタビューにそう語った。
ポンペオは、2011年5月に米海軍特殊部隊がパキスタンでビンラディンを殺害した際に潜伏先の隠れ家から押収した膨大な書類や手紙などを、これから「数週間のうちに」公表すると宣言。一方で、押収した物のうち、ポルノ類だけは公にしないと明言したのだ。
ポンペオが「(押収品の中には)ポルノや著作権で保護された物もある」と語ったニュースは、9.11に哀悼の意を捧げるアメリカではいささか異様に響いた。
ビンラディンの隠れ家からポルノが見つかった、という話は、何も新しいニュースではない。第一報が出たのは、2011年5月2日にビンラディンが殺害された直後の5月13日。ロイター通信が匿名の米政府高官の話を元に、パキスタン北部アボタバードの隠れ家からポルノが発見され、これらは「現代的で電子的に録画されたビデオであり、かなり広範囲に及ぶ」とスクープした。
しかしこの高官は、「ビンラディン自身がこれらを入手したり観たりしていたかどうかは分からない」ともコメント。ビンラディンの所有物かどうか分からないまま、2015年にはネットメディアのBroBibleがCIAに対して情報公開法を盾に公開を請求していたが、「CIAは節度を欠いた物を送ることを連邦法で禁じられている」という理由で却下されていた。
【参考記事】イスラム過激派のポルノ観賞を監視せよ
アルカイダ支持者を幻滅させるのが狙い
ではなぜ今、ポンペオがビンラディンのポルノに改めて触れ、そしてそれが大きなニュースになるのか。
これまでの報道によれば、隠れ家から押収された物の中には、携帯電話10個や12台近くのパソコン、約100枚のディスクにUSBメモリ、武器や紙の文書が含まれていたという。ある国防総省高官はこれらの押収品について、ニューヨーク・ポスト紙に「高位のテロリストから一度に押収した物としては最多だ」と語っている。
そんななか、テロの情報解析に役立つかもしれない情報が公開されることへの期待よりも、「ビンラディンのポルノ」がニュースの見出しを飾る。
その理由は、人々の関心がそちらにあるという現実が1つある(ビンラディンの趣味嗜好を覗き見したいという需要が一定層あるのだろう)。
他方で、米政府側がポルノに言及したがる理由はおそらく、「ビンラディンがポルノを観ていた(かもしれない)」という言説を流布することによって、アルカイダに共鳴する支持者たちを幻滅させることが目的だろう。イスラム教ではポルノは厳禁であり、ポルノ文化はビンラディンが批判してきた欧米文化の最たるものであるはずだからだ。