最新記事

イスラム過激派

ビンラディンの「AVコレクション」が騒がれる理由

2017年9月14日(木)17時36分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

テレビを見るウサマ・ビンラディンを撮影した映像より(2010年) REUTERS/Pentagon/Handout

<2011年の殺害から6年。アルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンの隠れ家からの押収物をCIAが近々に公表する予定だが、"あれ"だけは公にしないとCIA長官が語った。新しい話でもない「ビンラディンのポルノ」が、なぜまた話題になるのか>

9.11同時多発テロを指揮したアルカイダの指導者ウサマ・ビンラディンの「隠しポルノ」の数々を、CIA(中央情報局)は開示しない――2001年の9.11テロから16周年を迎えた9月11日、マイク・ポンペオCIA長官はFOXニュースのインタビューにそう語った。

ポンペオは、2011年5月に米海軍特殊部隊がパキスタンでビンラディンを殺害した際に潜伏先の隠れ家から押収した膨大な書類や手紙などを、これから「数週間のうちに」公表すると宣言。一方で、押収した物のうち、ポルノ類だけは公にしないと明言したのだ。

ポンペオが「(押収品の中には)ポルノや著作権で保護された物もある」と語ったニュースは、9.11に哀悼の意を捧げるアメリカではいささか異様に響いた。

ビンラディンの隠れ家からポルノが見つかった、という話は、何も新しいニュースではない。第一報が出たのは、2011年5月2日にビンラディンが殺害された直後の5月13日。ロイター通信が匿名の米政府高官の話を元に、パキスタン北部アボタバードの隠れ家からポルノが発見され、これらは「現代的で電子的に録画されたビデオであり、かなり広範囲に及ぶ」とスクープした。

しかしこの高官は、「ビンラディン自身がこれらを入手したり観たりしていたかどうかは分からない」ともコメント。ビンラディンの所有物かどうか分からないまま、2015年にはネットメディアのBroBibleがCIAに対して情報公開法を盾に公開を請求していたが、「CIAは節度を欠いた物を送ることを連邦法で禁じられている」という理由で却下されていた。

【参考記事】イスラム過激派のポルノ観賞を監視せよ

アルカイダ支持者を幻滅させるのが狙い

ではなぜ今、ポンペオがビンラディンのポルノに改めて触れ、そしてそれが大きなニュースになるのか。

これまでの報道によれば、隠れ家から押収された物の中には、携帯電話10個や12台近くのパソコン、約100枚のディスクにUSBメモリ、武器や紙の文書が含まれていたという。ある国防総省高官はこれらの押収品について、ニューヨーク・ポスト紙に「高位のテロリストから一度に押収した物としては最多だ」と語っている。

そんななか、テロの情報解析に役立つかもしれない情報が公開されることへの期待よりも、「ビンラディンのポルノ」がニュースの見出しを飾る。

その理由は、人々の関心がそちらにあるという現実が1つある(ビンラディンの趣味嗜好を覗き見したいという需要が一定層あるのだろう)。

他方で、米政府側がポルノに言及したがる理由はおそらく、「ビンラディンがポルノを観ていた(かもしれない)」という言説を流布することによって、アルカイダに共鳴する支持者たちを幻滅させることが目的だろう。イスラム教ではポルノは厳禁であり、ポルノ文化はビンラディンが批判してきた欧米文化の最たるものであるはずだからだ。

【参考記事】「選ばれし者」アルカイダの次期指導者はハムザ・ビンラディンで決まり?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震、インフラ被災で遅れる支援 死者1万

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 7
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中