北朝鮮2度目のICBM発射実験は、アメリカと日韓を分断するワナ
北朝鮮が7月28日に行ったICBM「火星14号」2度目の発射実験 KCNA/Reuters
<米シンクタンクの専門家は、今こそアメリカが日本と韓国を守る断固たる意志を示し結束すべきだが、北朝鮮はワシントンが内政でもめている空隙に乗じていると言う>
北朝鮮が7月28日(現地時間)に大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したことが、アメリカ国防総省によって確認された。日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾したこのミサイルは、7月4日に発射された最初のICBMと比べて、飛行高度、距離ともに上回るものだ。この性能があれば、アメリカ本土の都市に対する攻撃も可能になる。
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この記事では、国際情勢を専門とする米シンクタンク、大西洋評議会のアナリストによる、今回のミサイル発射に関する分析を紹介する。
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北朝鮮はこれまで、核弾頭も搭載可能なICBMを持つとう目標に向けて邁進してきた。今回の発射実験は、その努力が着実に実を結びつつあることを示している。北朝鮮の狙いは、本土を攻撃することもできるとアメリカを脅すことで、アメリカとアジアの同盟国との間に楔を打つことにある。
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今回のミサイル発射により、北朝鮮に対して現状維持政策をとる選択肢はあり得ないことがまたしても裏付けられた。ひとたび「核の盾」を手にすれば、北朝鮮は自信を深め、外交および軍事政策のあらゆる分野で、さらに攻撃的な行動に出る可能性が高い。
アメリカは、従来とは一線を画するこの新たな安全保障上の危機に対抗するため、同盟国との軍事態勢を抜本的に再編する必要がある。
核武装した唯一の全体主義国家
中国にも、北朝鮮を交渉のテープルにつかせるための新たな施策を採るよう引き続き促すべきだ。交渉の目的は、北朝鮮が持つ核兵器およびミサイルによる攻撃能力を削減させ、さらには全廃に追い込むことだ。
金正恩政権による2度目のICBM打ち上げは、北朝鮮が核武装を進めている世界で唯一の全体主義国家であることと考え併せれば、人類存亡の危機と見るべきだ。韓国、日本、アメリカは、3カ国の間に足並みの乱れが生じないよう、万全を期す必要がある。「北朝鮮との対話姿勢」を打ち出した韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、志は立派だがタイミングが悪過ぎた。
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韓国は度重なる北朝鮮の脅しにすっかり慣れっこになってしまい、事態の深刻さに無頓着になっているきらいがある。現在の情勢は保守対革新の対立軸で捉えられるものではなく、韓国、さらには日本の安全保障の根幹に迫る脅威だ。
中国が北朝鮮に自制を求める上で十分な役割を果たしているという誤った通念は、もはや通用しない。たとえトラブルメーカーでも、中国は北朝鮮を戦略的な緩衝帯として重視している。中国にとって、金正恩を権力の座に置いておくことが得策であることは間違いない。アメリカが主導権を取るしかない。