文在寅政権に問われる、財閥改革の覚悟
複数の調査によると、韓国の国民にとって、財閥問題は文政権の改革の中で優先順位が低い。節操のない優遇で財閥一族を増長させ、公的な資金を搾取され、市場の基本的な要素が損なわれているにもかかわらずだ。
韓国の上場企業全体の時価総額のうち、約半分を5大財閥の企業が占める。サムスンの企業だけで3割近くだ。さらに、サムスン電子だけで国の輸出の5分の1を担う。要するに、財閥は経済規模が大き過ぎてつぶせないのだ。
ただし、大き過ぎることを恐れるあまり、財閥を支配する一族の不正や横暴を看過することはあってはならない。
サムスンの書類上の会長は、3年前から病院で意識不明のまま(公式には「一時的な昏睡状態」)。事実上の経営者である長男は拘置所に入って4カ月、裁判を待つ身だ。
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普通の上場企業なら、株価は下落して、事業は混乱し、株主は経営陣の失態に拒否反応を起こすだろう。不祥事が相次いだ米配車サービス大手ウーバーのCEOだったトラビス・カラニックは先頃、投資家の圧力で辞任を余儀なくされた。
しかし、サムスンは帝王が不在でも、稼ぎ頭であるサムスン電子の記録的な収益と株価はほとんど影響を受けていない。ほかの財閥の場合も、会長が有罪判決を受けても株価が上昇する例はいくつもあり、創業者一族がいなくても健在だろう。世界的にも水準の高い教育と技術を有する国に、排他的な一族支配は必要ないのだ。
文大統領は、30年に及ぶ韓国経済の民主化を完成させる好機に巡り合わせた。今後は、財閥を抑制する法律を制定し、最小限の株式保有で帝国を支配できる巧妙で複雑な仕組みをほどき、財閥に搾取される中小企業への経済的支援を拡大することなどが求められる。
最初は痛みを伴うが、国全体を将来の痛みから救うことになる。聡明で勤勉な労働者が正当な機会を手にし、1つの会社が国の経済の命運を握る「サムスン・リスク」に怯えなくて済む。そういう国を目指すのだ。
[2017年7月11日号掲載]