最新記事

世界経済

次の覇権国はアメリカか中国か 勝敗を占う「カネの世界史」

2017年7月22日(土)11時30分
河東哲夫(本誌コラムニスト)

もっとも、米投資銀行が大々的に乗り出してくることは、中国経済にとって凶と出かねない。中国は昨年GDPの3.8%に当たる4130億ドルもの財政赤字に陥っている。今後大量に発行される国債を外資の手に委ねると、いざというときに売り浴びせられかねない。あたかもソ連崩壊後、米投資銀行が進出したロシアで98年に通貨ルーブルの暴落で起きた国債の債務不履行(デフォルト)と同じ目に遭うかもしれない。

北朝鮮の核開発抑制をめぐっても、米中の間でぎりぎりの取引が行われている。北朝鮮の資金を扱っていた中国の丹東銀行は6月末、米財務省から制裁を食らい、米金融機関との取引を禁じられた。北朝鮮の資金は中国4大銀行の一角にも流れていたとみられている。

今後アメリカが制裁対象を拡大すれば市場は過剰反応し、株価の暴落とさらなる資金流出を招きかねない。

【参考記事】中国マネーが招くベネズエラの破綻

中国はアメリカと同格になったと思っているのかもしれないが、それは危ない錯覚だ。自分の力を過大評価し、例えば台湾の統合に乗り出そうものなら、アメリカの反撃に遭い、中国共産党は政権を失うだろう。

ベネチアのカネはまだ英米、つまりアングロ・サクソンの国にとどまっているようだ。

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

[2017年7月25日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ダルトン、フジHDにSBI北尾社長ら12人の取締役

ワールド

米政権、通信社の代表取材を交代制に制限 ロイター・

ビジネス

午後3時のドルは142円前半に軟化、米関税の影響警

ビジネス

中国が通商交渉官を交代、元WTO大使起用 米中摩擦
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気ではない」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ印がある」説が話題...「インディゴチルドレン?」
  • 4
    NASAが監視する直径150メートル超えの「潜在的に危険…
  • 5
    【クイズ】世界で2番目に「話者の多い言語」は?
  • 6
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 7
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 8
    「世界で最も嫌われている国」ランキングを発表...日…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 1
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 2
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 3
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 4
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 5
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 6
    投資の神様ウォーレン・バフェットが世界株安に勝っ…
  • 7
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 8
    まもなく日本を襲う「身寄りのない高齢者」の爆発的…
  • 9
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 10
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 7
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中