フィンテックの台頭でお堅い銀行が様変わり
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JPモルガンがニューヨークに設けた新しいテクノロジー拠点は新興企業風のオフィス Chris Goodney-Bloomberg/GETTY IMAGES
<オンライン融資などフィンテックの普及が止まらない。後れを取る銀行界はスマホ時代のビジネスに転換できるか>
お堅い銀行のイメージしかない人は驚くかもしれない。アメリカの大手銀行キャピタル・ワンは、全米の主要都市に「キャピタル・ワン・カフェ」を続々とオープンさせている。従来の銀行の店舗とは異なり、オシャレな内装とくつろいだ雰囲気のカフェスペースを設けて、顧客の来店を促している。
店舗だけではない。金融機関のオフィスも様変わりしている。JPモルガンは、ニューヨークのテクノロジー拠点を大幅に拡張し、優秀な人材を集めるためにオフィスを新興企業風に変貌させた。開放的なオフィススペースをつくり、娯楽設備や無料のスナックを提供している。
銀行が変身しようと懸命なのには理由がある。いまアメリカの金融機関は空前の利益を上げているが、未来はとうてい楽観できない。昔ながらの銀行の時代は終わりを迎えつつある。
そのカギを握るのが「フィンテック」だ。これは、金融とテクノロジーの融合を意味する造語である。
近年、ペイパルやソーシャル・ファイナス(ソフィ)といった新しい企業が台頭し、アメリカ屈指のオンライン融資機関に成長した。こうした新興勢力は、中小企業向け融資や住宅ローンなどさまざまな金融サービスを提供し、柔軟性の高さで人気を得ている。一方、アップルペイ、ベンモ、ワールドレミットなどのオンライン送金サービスの普及も目覚ましい。
収益の6割が奪われる?
一部の専門家によれば、既存の銀行は、リテール部門の収益の6割をフィンテック企業に奪われる可能性もあるという。特に若い世代は、従来型の金融機関よりフィンテック企業に好印象を持っている。店舗やオフィスを派手にするだけでは、状況を打開することは難しい。
「いまだにウェブサイトやユーザー体験の改善さえすればいいと思っていて、サービスの抜本的な変革に乗り出していない銀行が多い」と、ブラジルのモバイル・クレジットカード会社、ヌーバンクのダビド・ベレスCEOは言う。
300万人を超すカードユーザーを擁するヌーバンクは、従来型の金融機関のようにクレジットスコア(個人の信用度を点数化したもの)を基準に融資の可否を判断するのではなく、スマートフォンや自動車運転免許のデータを基に判断を行う。その結果、一般的な金融機関で審査を通らない人も、融資を受けられる場合がある。
アメリカのソフィもそうだが、ヌーバンクでは借り手の信用度に応じて金利が変わる。手数料はかからず、スマートフォンを通じた使い勝手もいい。これでは、従来型のクレジットカードが時代遅れに見えたとしても無理はない。
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