フィンテックの台頭でお堅い銀行が様変わり
フィンテック時代が幕を開け、イノベーションを行えない金融機関は時代に取り残される運命が待っている。
そこで、多くの有力金融機関はKPMGのようなコンサルティング会社の力を借りて、ビジネスを変革しようとしている。「いささか軍拡競争の様相を呈している」と、KPNGのパートナー(共同経営者)、マーリー・ライスベックは言う。
顧客の要求は、厳しさを増すばかりだ。ライスベックによれば、顧客は金融サービスに対して、アマゾンのようなオンラインショッピングサイトに匹敵する使い勝手のよさを期待するようになっている。
既存の金融機関に不満を抱いているのは、個人の顧客だけではない。決済処理企業のWEXが全米の500人のCFO(最高財務責任者)を対象に実施した調査によると、モバイル決済を重要と考える人は全体の55%、ブロックチェーンによる決済をとても重要と考える人は54%に上る。企業関係者ですら、融通の利かない金融機関に不満を募らせているのだ。
多くの金融機関幹部たちは、抜本的変革の必要性を痛感している。「誰もが常に文化の変革について語っている」と、ライスベックは言う。
文化を変えることがうまく進まない場合もある。シティグループのシティ・フィンテック社でグローバル商品開発責任者を務めるキャリー・コラジャは、ペイパルから移籍してきたとき、変革を促すために上意下達型の業務フローを見直した。新興企業のオフィスをお手本に、新しい開発拠点も設けた。
紙の書類の時代は終わる
金融機関は、具体的にどのようにビジネスを変えるべきなのか。「顧客はいつでも自分のデータにアクセスできるべきだ」と、フィンテック企業フィニシティのニック・トーマス共同創業者は言う。同社は最近、大手銀行のウェルズ・ファーゴとデータの共有に関する協定を結んだばかりだ。「金融機関とフィンテック企業の提携が増えつつある」と、トーマスは言う。
テクノロジー企業の積極的な動きにより、金融業界とテクノロジー業界の境界線が曖昧になり始めている。ウェルズ・ファーゴのイノベーショングループ担当上級副社長シェリー・リトルジョンのみるところ、市場の状況を一変させる可能性があるのはアマゾンだという(ただし同社は基本的に、現時点で金融サービスを提供していない)。
これからの金融ビジネスで重要になるのは、モバイル時代に合わせて顧客との関わり方を根本から変えることかもしれない。それにより、融資市場を大きく広げられる可能性がある。