コラム

キャッシュレス社会で韓国の銀行が大変身 カフェ併設に移動型店舗も登場

2016年12月28日(水)16時47分

(c) Yohap news TV / Youtube

 この頃ソウル市内には銀行らしくない銀行が増えている。

 銀行とカフェが提携してテーブルを挟んで銀行窓口とカフェがあったり、デパートの中に支店がありデパートの営業時間に合わせて20時まで通常業務を行ったり、銀行と証券会社が一緒に支店を運営したり、銀行の通常営業時間は9時から16時のところを、銀行員のフレックス勤務制度を導入して12時から19時まで営業する支店もできた。

 大手金融グループの一つであるウリ銀行の一部支店は、銀行兼カフェとして営業している。ウリ銀行によると、店舗を借りる費用を節約でき、支店を利用する顧客も以前に比べ10%ほど増えたという。顧客はカフェの中に銀行があるという感覚で利用しているそうだ。

 デジタルキオスクと言って、ATMと遠隔相談用のモニター、スキャナーが一つになった機械で時間に関係なく窓口同様のサービスを受けられるコーナーも登場した。モニター越しに相談員が登場するので、手続きだけでなく、最近の金利はどうなのか、資産運用のため投資できる商品にはどういうのがあるかといった金融相談もデジタルキオスクから利用できる。シンハン銀行は、デジタルキオスクをコンビニの中に設置し、口座開設、デビットカード発行、振り込みなどあらゆる業務を利用できるようにしている。

 韓国の銀行では、印鑑なしで署名だけでも取引ができる。銀行口座の開設や各種書類に印鑑を押すことをやめて「デジタル署名」に切り替えたからだ。もちろん、印鑑を使い続けることもできるが、デジタルキオスクでは利用者が身分証や必要な書類をスキャナー経由で送信し、デジタル署名で手続きを行う。

 日本も似たような状況だと思うが、韓国では銀行員の仕事は窓口を閉めてから始まると言われている。銀行員の仕事の中には、各種書類を印刷して保存する、スキャンしてデジタルファイルとしても保存する、データベースにも入力するなど、書類の管理に関わる業務が非常に多く、管理費用もかかった。デジタルキオスクは利用者がセルフ方式で書類のスキャンや入力を行うので、銀行側の負担が減る。書類管理の仕事の負担が減った分、窓口の営業時間を延長することが可能になった。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

シリア、イスラエルとの安保協議「数日中」に成果も=

ビジネス

米小売業者、年末商戦商品の輸入を1カ月前倒し=LA

ワールド

原油先物ほぼ横ばい、予想通りのFRB利下げ受け

ビジネス

BofAのCEO、近い将来に退任せずと表明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story