コラム

キャッシュレス社会で韓国の銀行が大変身 カフェ併設に移動型店舗も登場

2016年12月28日(水)16時47分


韓国の銀行は変革の時 (c) Yohap news TV / Youtube

 釜山銀行は、人が集まる場所に支店を開く「移動型車両店舗」を運営している。市場や公団地域などに支店のクルマが出向き、仕事の関係でなかなか銀行支店に行けない人のために、16時から夜まで営業する。利用者数に応じて営業時間や移動する場所を調整し、臨機応変に運営している。移動型ではあるが支店なので、口座開設、通帳発行、ATMカード発行、貸出、インターネットバンキング申請、外国為替の両替など、主にインターネットバンキングでは対応できないサービスを利用できる。

 韓国の銀行が変身を余儀なくされた理由は、なんといっても銀行の営業利益が落ち込んでいるからだ。低金利により銀行にお金を預ける人が減少している。政治の不安から景気も不安定で、資金を借り入れる企業も減少傾向にある。まずは支店運営費から節約してなんとかやりくりしなければ、ということなのだろう。

 もう一つは、インターネットバンキングやモバイルバンキングの普及により、銀行の店舗を訪問する利用客自体が減少していることも理由としてあげられる。みんな銀行業務をネットで済ませてしまうので、今までのように大きな支店を持つ必要がなくなりつつある。

 韓国HANA金融経営研究所の調べによると、銀行店舗数は2014年末の7,398店から2015年末には7,261店になった。137店減少している。店舗数が減ったのはソウル市を中心に首都圏ばかりなので、人口減少により利用者が減少したというよりは、他の理由が考えられる。同研究所は、インターネットバンキング・モバイルバンキング、SNSを使った個人間の振り込みといったフィンテック(金融+ICTの融合)の利用が進み、銀行の店舗に行かなくても金融サービスを利用するのに何の問題もなくなったからではないかと分析している。

プロフィール

趙 章恩

韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

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