最新記事

食の安全

カリッと香ばしいフライドポテトが消える? EUとベルギーのポテト論争 

2017年7月31日(月)17時45分
モーゲンスタン陽子

また同観光相は食政策委員にあてて「ほかの国には異なる文化があると理解しています。しかし、私たちには私たちの文化的伝統があります。もしEUがこれを禁ずるなら酷いことです」と嘆願したと、テレグラフガーディアンが報じている。

委員会側は躍起になってこれを否定。代表者たちが「委員会にはベルギーのフライ、またはどんなフライでも、禁止する意図はありません、繰り返します、禁止する意図はありません」、あるいは「だれにもジャガイモの下茹でを強制しはしません。温度が175℃以下ならジャガイモを好きにしてかまいません」などと答弁している。EU本拠地であるベルギーが(存在感を高めようと)政治ゲームをしているのではないかと示唆する者もいる(テレグラフ)。

ガーディアンはさらに、「傷に侮辱を加える」として、新規約の草案に「フレンチ・フライ」という表記が用いられていることを指摘。アメリカや世界の一部で一般的な呼称だが、これは第二次世界大戦中にベルギーのフランス語圏ではじめてフライドポテトを食べたアメリカの軍人たちが誤った呼称を考え出したためと言われている。

子供へのリスクがもっとも高い

結局、下茹では「可能ならしたほうがいい」程度の提案で、飲食業者に温度などそのほかのガイドラインを徹底して守らせることでアクリルアミドを減少させる方向で収まったわけだが、喜んでばかりもいられない。伝統的な製法と味が守られたとしても、リスクがあることには変わりない。ガーディアンによると、欧州食品安全機関(EFSA)は子供へのリスクがもっとも高いと警告しているという。

欧州では日本の「お子様ランチ」や「お弁当」のように子供のために品目の多い食事を提供する風習があまりなく、レストランでの子供メニューといえばフライドポテトを添えたスナックが一般的だ。小さな子供にフライドポテトのみをまるまる一皿食べさせる親も珍しくない。

飲食業者からの反発もある。ベルギーと同じくフライドポテトの消費量の多いドイツでも今回の決定が報じられているが、厳しい温度調整や、「黄金色」以上の暗い色はダメ、10分以内に消費、などの細かい「フライドポテト信号」のルールは「極端で不必要で官僚的」だと、ホテルや飲食業界が顔をしかめているという。一方で、欧州消費者連盟(BEUC)は今回の決定を大事な最初の一歩とみなしている(WELT)。

新規約は2018年早春に施行される見込み。


【参考記事】セックス、ピストル、ストリップ──ベルリン警察が公共の場で乱行
【参考記事】男性諸氏は要注意! スペインのバスで「大股開き」が禁止に

【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル!
 ご登録(無料)はこちらから=>>

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中