劉暁波は大陸に残ったがゆえに永遠に発信し続ける----習近平には脅威
2002年にニューヨークにあるMirror Books(明鏡出版社)が中国語で『中共壮大之謎――被掩蓋的中国抗日戦争真相』(中共が強大化した謎――覆い隠された中国抗日戦争の真相)(謝幼田著)を出版したので、彼はそれを読み、胡耀邦がスピーチで言った言葉の具体的な内容を知ったのだろう。中国の言論弾圧の出発点はここにある。
習近平政権には脅威――その死を以て発信し続ける劉暁波
胡耀邦も劉暁波も、中共の歴史の真相を知っていた。
そして自らの命を懸け、最後まで中共統制下の大陸に踏み止まり、その死を以て発信し続ける劉暁波氏のこのたびの一連の出来事は、習近平政権にとっては大きな脅威となろう。
EU(欧州連合)のトゥスク大統領とユンケル欧州委員長は共同声明で中国政府の対応を非難し、「中国におけるもっとも卓越した人権の擁護者に一人だった」と劉暁波氏を讃え、言論弾圧により獄中にいるすべての民主活動家を解放すべきだと中国政府に要求した。
ノーベル委員会も13日に声明を出し、中国の対応を非難した。
あのトランプ大統領でさえ劉暁波を「民主主義の自由の追求のために人生を捧げて勇気ある活動家」と礼賛し、ティラーソン国務長官はさらに劉暁波氏の妻・劉霞氏の受け入れを表明している。
劉暁波氏にノーベル平和賞を授与したことで中国との関係が悪化し経済制裁を受けていたノルウェーのソルベルグ首相だけは唯一、中国政府の対応に対し一切、言及しない形で中国政府への非難を避けた。EUやノーベル委員会は、その姿勢を批判した。
こういった国際社会の声は、習近平には大きな脅威となるだろう。
国内でいくら言論弾圧を強化しても、国際社会は黙っていない。
習近平が、毛沢東の化身を装って弱まっていく中国共産党への敬意を復活させようとしても、それは失敗に終わるだろう。
日本は?
そのような中で、日本はどうだろうか?
日本は、劉暁波存命中に、遂に救いの手を差し伸べる声明を出す道を選ぶことができなかった。筆者は人権派弁護士等から、飛行時間が短く医療レベルも高い日本が劉暁波を受け入れてくれるといいのだがというメールを受けていたが、それを発信する前に事態が動き、そのチャンスを逸したことを残念に思う。
彼らは今では、ドイツ・ハンブルグのG20での日中首脳会談で、安倍首相が日本のパンダの誕生を例にとって「中国政府流の日中友好」を強化していくよう懇願し中国の顔色ばかりを見ているとして、日本への期待を捨ててしまった。