最新記事

経営

日本のCEOは技術革新を生き抜く自信がない

2017年6月30日(金)16時20分
猪澤顕明(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

「自国の成長見通し」に自信を持っている日本企業のCEO(最高経営責任者)は昨年の91%に対して今年は71%、「自業界の成長見通し」に自信を持つのは昨年の92%から今年は41%と大幅に後退――。

コンサルティング会社・KPMGが6月15日に公表した、主要10カ国・11業種のCEO1261人を対象に実施した調査の結果(調査期間は2月21日~4月11日)からは、日本の経営者が自国や自業界の先行きについて極端に慎重になっている状況がハッキリと見て取れた。

これは、日本銀行が4月に公表した直近の短観の結果とほぼ同様だ。短観の業況判断DIは大企業製造業で現状の12から先行きは11と、1ポイントの低下。全産業全規模では現状の10から先行きは4と、6ポイント低下する想定となっている。

破壊的なテクノロジーに対応できない

日本企業が先行きに対して慎重になっている一因は、地政学リスクの高まりだ。中東や北朝鮮をめぐる情勢に加え、世界各地で頻発しているテロなど、地政学的な不確実性は確実に増している。こうしたリスク要因が企業経営者のマインドを慎重なものにしているという報告は、今回のKPMGの調査以外でもよく見られる。

今回の調査が興味深いのは、日本のCEOが慎重姿勢を強めているもう1つの理由を示唆している点である。それは「破壊的なテクノロジーに追随・対応できていない不安感」だ。

toyokeizai170630-2.jpg

日本からは売上高100億ドル以上の大企業を中心に100人のCEOが回答しているが、「自業界における破壊に関する認識」について87%が「今後3年間で技術革新により自業界に大きな破壊が起きると予想」している。これはグローバル調査の48%を大きく上回っている。同じ質問に対し、「技術破壊は脅威ではなく機会ととらえている」という回答が53%あったが、逆の見方をすると、相当な割合のCEOが「今後3年で技術破壊が起き、自業界にとって脅威になる」と考えていることになる。

数年前まで「技術立国」などと持てはやされていた日本に何が起きているのか。この間に生じたのは「技術の質」の変化だ。日本における調査結果をまとめた、KPMG/あずさ監査法人の宮原正弘アカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部長は、そう指摘する。

「日本企業が秀でているのは、生産などのプロセスにおける技術改善が中心だった。だが、最先端のテクノロジーはAI(人工知能)やブロックチェーンなどを組み合わせて、ビジネスモデルそのものを変革していく技術。日本企業はその流れに十分に乗ることができていない」(宮原氏)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中