ディズニーランドの行列をなくすのは不可能(と統計学者は言う)
熱心なディズニーファンだけではない。ディズニーが行った出口調査でも、来場者の不満のいちばんの原因は長い行列だということがわかっている。業界通によると、平均的な来場者は1回8~9時間の滞在のうち3~4時間を無駄にしている。パーク内にいるあいだ、2~3分のうち1分は必ず立って並んでいるのだ! アミューズメント・ビジネス誌の推算によると、夏のテーマパークの主要アトラクションの待ち時間は、全米平均で60分。60分待って、アトラクションに2分乗る。4人家族が1回の旅行で使う費用は1000ドルかそれ以上なのだから、無限に続きそうに思える列にいらだつ人がいるのも不思議ではない。
こうした経験談のなかで、行列を回避する思い切った作戦はひときわ鮮明に映る。必要なのはそれなりの覚悟だ。
「パークに来たら、僕は頑張るパパになる......午後はパークの端から端まで走り回り、たいていの人よりたくさんアトラクションに乗って、待ち時間は少ないし、ショーもパレードもたくさん見る。子供とずっと一緒ではないけれど」
少々の犠牲は当たり前のようで......
「長い行列を避けるために朝の早い時間を有効に使い、人気アトラクションはパレードの最中や食事時、夜遅くを狙え」
パークのシステムも使いこなそう......
「私の後ろに並んでいた母親が、前回来たときはダンボに3時間並んだと話していた。今回はアーリー・アドミッション(訳注:ディズニーのオフィシャルホテルの宿泊客などが購入できるチケットで、一般の開場前に入場できる)を買ったから、並ばずに3回連続で乗ったそうだ」
ときには教師をおだてて特別に許可をもらい......
「(ディズニーへ行くために)子供の学校を休ませよう。そこまでする価値があるか? もちろん!」
思わぬ機会も逃さずに......
「フロリダは、とくに夏の午後は雨がよく降る。うれしいのは雨を敬遠する人もいること。どこの売店にも置いてある1枚5ドルの明るい黄色のポンチョを買おう。あとは子供たちと歩き続けるのみ」
戦略は柔軟に変えること。
「人の心理の裏の裏をかけば、うまくいくんじゃないか。ディズニー・ワールドでは1つのパークが早く開いて、みんながそこに行く......(そう考えてみんながそのパークを避けるから)私たちはそのパークに行けばいい。混んでいるだろうと思ってみんな来ないから」
需要が収容能力を上回ると、待つ人の列ができる。大規模なアトラクションは1時間に1000~2000人を収容できるから、それ以上集まると列ができる。では、需要を正確に予測できれば、十分な収容能力のアトラクションをつくれるのではないか? 長い行列は怠慢な設計の証拠なのだろうか? 意外にも、答えはいずれも「ノー」だ。
待ち時間を生む真犯人は、設計ではなく「ばらつき」なのだ。ディズニーのテーマパークは基本的に需要の最大90パーセンタイルを満たすように設計されている。つまり理論上は、10日のうち9日は収容能力に余裕があるはずだ。しかし実際は、長い待ち時間の体験談は年間を通してほぼすべての日にまたがっている。
【参考記事】打倒ディズニーを掲げる中国のテーマパーク