ボケたくなければ、片づけは自分でしなさい
これら3つの認知機能(計画力・エピソード記憶の想起・注意分割機能)は、認知症になる前に、最初に低下する認知機能だと言われている。だからこそ、「前後にメモを取って片づけをする」というだけのことが、脳を十分に活性化して、認知症を予防するトレーニングになるというのだ。
なお、メモは詳細なものである必要はなく、片づけ前なら「いつ」「どこを」「どのように」を書くだけでも十分に脳を鍛えられるとのこと。ただし片づけ後のメモは、海馬を鍛えるために、すぐではなく翌日に「思い出して書く」ことがポイントだ。
さて、いざやる気を起こして片づけに取り組もうとすると、ついクローゼットや押入れといった"大きな敵"から手をつけたくなるが、それこそ挫折のもと。まずは簡単にできるところから始め、トレーニングを重ねて、徐々にスキルを磨いていくことが大切だ。
著者の提唱する片づけトレーニングには5つのステップがあり、最初のステップは「カトラリーの引き出し」。箸やスプーン、フォークなどのカトラリーは用途(食べるときに使う)がはっきりしているため、最初に取り組むのに最適な片づけ場所だという。
それに対して、たとえば下駄箱は、季節や用途によって靴を分類できるうえ、家族の共有スペースでもあることが、片づけの難易度を高くしている。
このように段階を踏んでいくことで、片づけに対する苦手意識をなくし、少しずつ自信をつけていくのだという。それによって片づけが苦でなくなり、しかも「脳トレになる」というご褒美もあるので、むしろ楽しく取り組めるようになるのだ。
「捨てる」ではなく「選ぶ」、「自分で片づける」ことの大切さ
片づけが苦手な人の多くが、「もったいなくて捨てられない」という問題を抱えている。
しかし、不要なものまで大量に溜め込み、何がどこにあるかわからず、必要なときに探し出すこともできずに、同じものを何個も買ったり、結局は捨ててしまったりすることのほうが、ずっともったいない、と著者は言う。
とはいえ、それでも捨てられない、という人は多い。そこで著者が強調しているのが、捨てるのではなく「選ぶ片づけ」であるという点だ。不要なものを捨てるのではなく、必要なもの・使うものを選ぶことが、片づけトレーニングの基本となる。
「使うもの」を選んだあとに残ったものが「使わないもの」ということになるが、それをすぐに「捨てるもの」とするには勇気がいる。だから「一時保管BOX」を用意し、ひとまずそこに入れておく。そして、たとえば半年間一度も開けなかったら、そのまま捨てる。
こうすれば、なかなか捨てられなかったものでも、気持ちの整理がついて、捨てることをすんなりと受け入れられるようになるという。