最新記事

米中関係

米中首脳会談の結果を、中国はどう受け止めたか?

2017年4月10日(月)06時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

それは、今年の秋に党大会があるからだ。

3月は全人代(全国人民代表大会)があったし、5月には一帯一路の初めてのサミットに没頭しなければならない。6月に入れば夏の北戴河の集まりにおける次期党大会の人事配置に着手し始める。したがって、訪米時期としては4月しかなかった。もちろん日本やイギリス、ドイツあるいはカナダなどの首脳がトランプ大統領との首脳会談をつぎつぎとこなしている中、中国がそう遅れととったのでは「威信」にかかわる。それも訪米を急いだ理由の一つだ。

その割に、トランプ大統領を前にした習近平国家主席の表情は、おもねるように委縮し、いつもの、あの「威張り過ぎた」表情や「満面の笑みサービス」は消え、始終「ともかく泥を塗られても屈辱に耐え、一見、柔和な笑みを絶やさず、トランプ大統領と対等に渡り合っていますよ」という「映像用のポーズ」だけは保つことに全力を注いでいるように映った。

中国共産党中央委員会の習近平総書記としては、何としても、米中首脳会談を輝かしいものとしなければならなかったのである。

米中首脳会談は「大成功!」と中国国内報道

米中首脳会談に関する中国国内における報道は、きらびやかさに満ち、ただひたすら中国の外交勝利を讃えるものに貫かれている。

まず初日の晩餐会に関しては習近平国家主席夫妻とトランプ大統領夫妻が、「いかに互いを尊重して円満な雰囲気の中で行なわれたか」を讃えた。

たとえば中国共産党の管轄下にある中央テレビ局CCTV-1のニュースCCTV13(最初に15秒間ほどの宣伝がある)をご覧いただきたい。

そこでは概ね、以下のような説明をしている。

――習近平は「トランプ大統領と非常に有意義な会談をおこない、中米関係に関して重要なコンセンサスを持つに至った。われわれは相互尊重と互利互恵の基礎の上に立って、貿易投資や外交安全、サイバー・セキュリティ、人文交流など広範な領域において協力を遂行していくことを確認し合った」と語り、一方、トランプは「習主席の指導のもと、中国が際立った発展を遂げたことを、世界中の人が尊敬し注目している。習近平主席とは初めて会談したが、さまざまな意見を交換することができて、実にすばらしい話し合いを持つことができ、友情深い関係を築くことができた」と述べた。

このように、やたら「晩餐会は実に友好的に雰囲気に溢れていた」と褒めそやした。
CCTV13にあるトランプ大統領の5歳の外孫(イヴァンカさんの娘)が『茉莉花』(モア・リー・ホワ)という歌を中国語で歌った場面は、新華社が特に報道したため、他の多くのメディアが転載した。たとえば「鳳凰網」や「捜狐」などがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国副首相が米財務長官と会談、対中関税に懸念 対話

ビジネス

アングル:債券市場に安心感、QT減速観測と財務長官

ビジネス

米中古住宅販売、1月は4.9%減の408万戸 4カ

ワールド

米・ウクライナ、鉱物協定巡り協議継続か 米高官は署
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中