最新記事

米中関係

米中首脳会談の結果を、中国はどう受け止めたか?

2017年4月10日(月)06時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

米中首脳会談、初日の晩餐会 Carlos Barria-REUTERS

中国は米中首脳会談の成果を大きく強調したが、共同記者会見もないという異常事態。会談直前の北朝鮮のミサイル発射と会談中の米国によるシリア攻撃により顔に泥を塗られながら、習近平が笑顔を保った訳とは?

顔に泥を塗られながら、笑顔を保った習近平

米中首脳会談の開催を目前にした北朝鮮は、4月5日、またもやミサイルを発射した。

トランプ氏が大統領選中に「ハンバーガーでも食べながら金正恩(キム・ジョンウン)と話をしてもいい」という主旨のことを言ったものだから、北朝鮮はトランプ氏が大統領に当選した昨年の11月8日から今年2月12日まで、ミサイル発射を控えていた。ひょっとしたらアメリカの次期大統領が自分と会ってくれるかもしれないと期待していたからだろう。 

北朝鮮には「アメリカに振り向いてほしい」という強い願望がある。金正恩のあまりのならず者ぶりに今では見えなくなっているが(そして感覚的に受け入れにくいが)、1953年に休戦協定で終わった朝鮮戦争を停戦協定(平和条約締結)に持って行ってほしいというのが、もともとの始まりではあった。53年7月に南北軍事境界線の板門店で休戦協定に署名したのは北朝鮮とアメリカだ。だからアメリカに振り向いてほしい。停戦になれば、在韓米軍の必然性が消える。「ならず者国家」は、たしかに今ではもうそれだけではなくなっている。核保有国として認めろという姿勢を崩していない。

しかしアメリカ政治に詳しい早稲田大学の中林美恵子氏によれば、アメリカ政界(の一部)では「いっそのこと北朝鮮とは平和条約を結んだ方がいいのではないか」という声が、いま出始めているとのこと。

―――

だが、その声はまだ小さいのだろう。

2月12日に北朝鮮がミサイル発射の抑制を破ったのは、2月3日に米韓の間でTHAADの年内配備で意見が一致したからであり、2月10日に開催された日米首脳会談で北朝鮮に対して核・ミサイル開発の放棄を要求することを意思表明したからだろう。この時点で、「トランプは自分とハンバーガーを食べることはない」と判断したにちがいない。

だから安倍首相が訪米してトランプ大統領と首脳会談を行った最終段階でミサイル発射を再開している。

となれば、4月5日の北朝鮮によるミサイル発射は、米中首脳会談を牽制するために行なったものと考えるのが普通だろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

政府、総合経済対策を閣議決定 事業規模39兆円

ビジネス

英小売売上高、10月は前月比-0.7% 予算案発表

ビジネス

アングル:日本株は次の「起爆剤」8兆円の行方に関心

ビジネス

三菱UFJ銀、貸金庫担当の元行員が十数億円の顧客資
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中