ウィキリークスはCIAを売ってトランプに付いた
つまり、トランプはCIAの「なりすまし」作戦の犠牲者だったというのだ。2001年の9.11(アメリカ同時多発テロ)は米政府の犯行だったとか、2012年のサンディフック小学校銃乱射事件はあらかじめ仕組まれたヤラセだったなど、トランプが絶賛するラジオ司会者アレックス・ジョーンズが垂れ流す陰謀説を信じがちな聴衆なら、この手の話も極めて信ぴょう性が高いと信じてしまう。CIAは韓国サムスン製のスマートテレビを使って会話を傍受できるなど、今回ウィキリークスが暴露した他の情報も、オバマに盗聴されたというトランプの主張に真実味を与えるものだ。
先日はジェフ・セッションズ司法長官が上院の公聴会で「ロシアの代表者と接触したことはない」と証言したのが嘘だったとばれて、今後ロシア疑惑の調査には関与しないと表明させられるなど、トランプにとっては不運な日が続いていた。そんな中、話題を変えてくれたのがウィキリークスだ。先週は、守勢に立たされていたのはトランプだった。今や形勢が逆転し、ウィキリークスに機密情報が漏れた原因やその内容をめぐり、不名誉な質問攻めにあっているのは情報機関のほうだ。
今回の暴露があったのは、まったくの偶然かもしれない。だがこれまでウィキリークスが、米大統領選でトランプを勝たせるためにロシアの情報機関に利用されてきた経緯を考えると、リーク元の特定だけでなく、なぜ今のタイミングで公開されたのか、ますます疑問が深まる。たとえホワイトハウスとロシア政府が現時点で共謀していないとしても、双方のビジョンはあまりに密接に重なる。プーチンもトランプも、自分たちの政権の邪魔になる米情報機関の威信を落としたいのだ。