最新記事

アメリカ政治

ウィキリークスはCIAを売ってトランプに付いた

2017年3月9日(木)19時20分
マックス・ブート

第2に、ウィキリークスはアメリカの機密をしばしばリークするが、ロシアの機密を漏らしたことは一度もなく、米情報機関はウィキリークスをロシアの情報機関の手先とみなしてきた。国家情報長官室が1月に公開した機密指定を解除された報告書は、「かなり確度が高い」情報として、「ロシア軍の情報機関がウィキリークスに情報を流していた」と述べている。報告書によれば、その目的は明らかだ。「プーチンとロシア政府はトランプ次期大統領を選挙で勝たせようとして、ことあるごとにクリントン国務長官の信頼性を傷つけ、トランプと比べて好ましくないイメージを広めようとした」

トランプは大統領選中のロシアのサイバー攻撃をなかなか認めようとしなかったが、情報機関の報告を受け入れざるを得なくなると、今度はロシアの介入は選挙結果に全く影響を与えていないと言いだした(今回の大統領選が際どい勝負だったことを考えると、何が結果を左右し、何が無関係だったかなど誰にも分かるわけがないのだが)。

【参考記事】ロシアのサイバー攻撃をようやく認めたトランプ

「悪者はCIA」

プーチンが米大統領選で自分の勝利に貢献したとする情報機関の分析は、トランプの復讐心に拍車をかけた。例えば1月に米ニュースサイトのバズフィードが英情報機関の元工作員の主張として、ロシアがトランプの不名誉な情報を握っているとする文書を公表すると、CIAのスパイの仕業だと批判。ツイッターでこう怒りをぶちまけた。「情報機関は決して偽の情報をリークするべきじゃなかった。これは私に対する最新の攻撃だ。われわれはナチスドイツで暮らしているのか」。つい最近も、情報機関はオバマによる自分の盗聴に加担したとやり玉にあげるなど、敵意は募る一方だ。自分はロシアと一切関係がなく、これはオバマを支えたエスタブリッシュメント、邪悪な陰謀を持つ「ディープステート(影の政府)」の犠牲者なのだと、トランプは一貫して主張する。

【参考記事】「トランプはロシアに弱みを握られている」は誤報なのか

だからこそウィキリークスによる最新の暴露で、CIAが暗号を複製するプログラムを利用して国外のコンピューターを操作し、ハッキングが外国から行われたように装ったとする情報は重要だ。DNCへのハッキングに使われた暗号がCIAのデータベースに残っていた証拠はないが、右派のメディアはお構いなしに今回の暴露を吹聴している。極右ニュースサイトのブライトバートには、こんな見出しが躍った。「ウィキリークス:CIAは『盗んだマルウェア』を使い、サイバー攻撃をロシアのせいにした」。ロシア政府系のインターネットボットも、同様の主張を拡散している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア、中距離弾でウクライナ攻撃 西側供与の長距離

ビジネス

FRBのQT継続に問題なし、準備預金残高なお「潤沢

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中