ウィキリークスはCIAを売ってトランプに付いた
第2に、ウィキリークスはアメリカの機密をしばしばリークするが、ロシアの機密を漏らしたことは一度もなく、米情報機関はウィキリークスをロシアの情報機関の手先とみなしてきた。国家情報長官室が1月に公開した機密指定を解除された報告書は、「かなり確度が高い」情報として、「ロシア軍の情報機関がウィキリークスに情報を流していた」と述べている。報告書によれば、その目的は明らかだ。「プーチンとロシア政府はトランプ次期大統領を選挙で勝たせようとして、ことあるごとにクリントン国務長官の信頼性を傷つけ、トランプと比べて好ましくないイメージを広めようとした」
トランプは大統領選中のロシアのサイバー攻撃をなかなか認めようとしなかったが、情報機関の報告を受け入れざるを得なくなると、今度はロシアの介入は選挙結果に全く影響を与えていないと言いだした(今回の大統領選が際どい勝負だったことを考えると、何が結果を左右し、何が無関係だったかなど誰にも分かるわけがないのだが)。
【参考記事】ロシアのサイバー攻撃をようやく認めたトランプ
「悪者はCIA」
プーチンが米大統領選で自分の勝利に貢献したとする情報機関の分析は、トランプの復讐心に拍車をかけた。例えば1月に米ニュースサイトのバズフィードが英情報機関の元工作員の主張として、ロシアがトランプの不名誉な情報を握っているとする文書を公表すると、CIAのスパイの仕業だと批判。ツイッターでこう怒りをぶちまけた。「情報機関は決して偽の情報をリークするべきじゃなかった。これは私に対する最新の攻撃だ。われわれはナチスドイツで暮らしているのか」。つい最近も、情報機関はオバマによる自分の盗聴に加担したとやり玉にあげるなど、敵意は募る一方だ。自分はロシアと一切関係がなく、これはオバマを支えたエスタブリッシュメント、邪悪な陰謀を持つ「ディープステート(影の政府)」の犠牲者なのだと、トランプは一貫して主張する。
【参考記事】「トランプはロシアに弱みを握られている」は誤報なのか
だからこそウィキリークスによる最新の暴露で、CIAが暗号を複製するプログラムを利用して国外のコンピューターを操作し、ハッキングが外国から行われたように装ったとする情報は重要だ。DNCへのハッキングに使われた暗号がCIAのデータベースに残っていた証拠はないが、右派のメディアはお構いなしに今回の暴露を吹聴している。極右ニュースサイトのブライトバートには、こんな見出しが躍った。「ウィキリークス:CIAは『盗んだマルウェア』を使い、サイバー攻撃をロシアのせいにした」。ロシア政府系のインターネットボットも、同様の主張を拡散している。